シネマテーク・フランセーズ

映画博物館の展示は、「初期の映写機やカメラなど映画誕生にかかわる装置」「衣装、台本、セットのデザイン画や模型など実際の撮影に使われた品」そして「映画のポスター」の3つのカテゴリーで構成されています。ここでは、映写機や撮影技術の変遷などから草創期の映画史を振り返るとともに、映画ファン垂涎のコレクションの一部をご紹介します。

映画の歴史をたどり、多彩なコレクションを楽しむ映画博物館(ミュゼ・ド・ラ・シネマテーク)

映画誕生以前に存在した装置〜映写機

▲博物館の入口

 19世紀に発明された映写機の原型といわれる展示品を見てみましょう。もともと映写機とは、17世紀中頃の「幻灯機(Lanterne magique)」の誕生から発展したものでした。オランダの天文学者クリスティアーン・ホイヘンス(Christiaan Huygens/1629-1695)は研究のために望遠鏡を製作していましたが、ある時そのメカニズムにヒントを得て、絵を別の場所に映し出すことを思いつきました。そしてガラスなど透明な素材に絵を描いて、光とレンズによってその絵を壁に浮かび上がらせることに成功したのが幻灯機の最初といわれています。19世紀後半には2枚の絵を交互に投じることができる装置や、複数の絵をレンズの周りに連ねてひとコマひとコマ回転させることで短いストーリーとなる映写機が発明されました。

▲展示室の様子
©Coll. Cinémathèque française

 この頃、物理学者たちはコマ送りの絵を回転させると動いているように見えるという、網膜への残像現象に興味を持っていました。研究が進められる中、イギリス出身の写真家エドワード・J・マイブリッジ(Eadweard J.Muybridge/1830-1904)が「ズープラキシスコープ(zoopraxiscope)」という装置を発明しました。これは、例えば円盤の円周上に少しずつ変化する馬の絵を描き、回転させることで残像現象により馬が疾走しているように見えるというものでした。パラパラ漫画の原理です。そして物理学者たちは絵ではなく、生きている人や実際の風景でも同じことができないかと考えて、写真をつなぎ合わせることを思いついたのです。これが、映像の始まりです。

▲ホイヘンスが幻灯機用に描いた絵
©Coll. Cinémathèque française
  ▲レンズの周りに連なる複数の絵を回転させて上映する映写機(1888年)   ▲ズープラキシスコープ用にマイブリッジが自ら描いたコマ送りの馬の絵

撮影技術から見る映画の歴史

▲マレが発明したクロノフォトグラフィック・カメラ

 次に写真銃で著名なフランスの生理学者エティエンヌ=ジュール・マレ(Étienne-Jules Marey/1830-1904)の「クロノフォトグラフィック・カメラ(caméra chronophotographique)」を見てみましょう。前述のマイブリッジは1878年、12台のカメラを用いてギャロップする馬の12コマの連続写真の撮影に世界で初めて成功しました。そこで、マレはそれをどうにか1台で撮影できないものかと考えました。そして1886年、フィルムをひとコマずつ連続して送ることで連続写真が撮れるクロノフォトグラフィック・カメラを発明したのです。このカメラはまさに映画の撮影カメラの原型といえます。

▲初期の映写機などが並ぶ展示室の様子

 映画の歴史というと、世界の名作や時代を反映した作品に注目しがちですが、撮影技術の発達も映画史と深いかかわりを持っています。博物館の展示をたどると、映画が、多くの学者たちの研究、それにともなう技術の発展があったからこそ誕生した芸術であることがよく分かります。

映画ファン垂涎のコレクション

▲展示室のエントランス

 博物館には映画誕生初期から近年のものまで、作品にまつわる貴重な資料が数多く残されています。例えば、初期のものでは、エントランスにはメリエスが撮影した『月世界旅行』(1902年)の衣装、そして展示室奥にはサラ・ベルナール(Sarah Bernhardt/1844-1923)主演の『椿姫』(1912年)のポスターが飾られています。そして近年の監督では、『シェルブールの雨傘』(1964年)や『ロシュフォールの恋人たち』(1967年)で知られるジャック・ドゥミ(Jacques Demy/1931-1990)のコーナーがあります。

▲『椿姫』のポスター

 ここには『ロバと王女』(1970年)の撮影でカトリーヌ・ドヌーヴ(Catherine Deneuve/1943-)が使ったロバの衣装や、『シェルブールの雨傘』でドヌーヴが演じたジュヌヴィエーヴの部屋のデザイン画や撮影現場での写真などを見ることができます。

▲『ロバと王女』の撮影に使われた衣装

 もちろん、コレクションの対象はフランス映画だけではありません。世界中のさまざまな作品ゆかりの、映画ファン垂涎のコレクションが数多く展示されています。『東への道』(D・W・グリフィス、1920年/アメリカ)のリリアン・ギッシュ(Lillian Gish/1893-1993)の衣装、『メトロポリス』(フリッツ・ラング、1927年/アメリカ)のロボット、『モダン・タイムス』(チャップリン、1936年/アメリカ)の歯車、『風と共に去りぬ』(ヴィクター・フレミング、1939年/アメリカ)のヴィヴィアン・リー(Vivien Leigh/1913-1967)の衣装、『サイコ』(アルフレッド・ヒッチコック、1960年/アメリカ)の母親のミイラ……。ラングロワが狂気と紙一重の情熱で集めたコレクションが眠るシネマテークの博物館。シネフィル(映画狂)ならずとも、一度は訪ねてみたい映画の聖地です。

▲『シェルブールの雨傘』のジュヌヴィエーヴの部屋のデザイン画   ▲『シェルブールの雨傘』のキャスト・スタッフの集合写真
Update : 2011.5.1
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シネマテーク・フランセーズ

  • 所在地
    51 rue de Bercy 75012 Paris
  • Tel
    +33 (0)1 71 19 32 00
  • Fax
    +33 (0)1 71 19 32 01
  • E-mail
    contact@cinemathequefrancaise.com
  • URL
    http://www.cinematheque.fr
  • 休館日
    火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
  • 映画鑑賞料
    一般:6.5ユーロ
    割引料金:5ユーロ
  • アクセス
    地下鉄6番線または14番線のBercy駅下車

映画博物館

  • 開館時間
    月・水〜土曜日:12:00-19:00
    日曜日:10:00-20:00
  • 入館料
    一般:5ユーロ
    割引料金:4ユーロ
    18歳以下:2.5ユーロ
    *日曜日の10:00〜13:00は無料

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