▲ローラン・マノーニ氏

映画博物館コミッショナー、ローラン・マノーニ氏インタビュー

2005年、パリ12区ベルシー地区に新たにオープンしたシネマテーク・フランセーズは、博物館、図書館、上映室などを備えた、フランスで唯一の映画の総合施設です。MMFは、映画博物館のコミッショナーで所蔵品管理のディレクターを務めるローラン・マノーニ(Laurent Mannoni)氏に、ミュージアムの運営についてお話を伺いました。

▲旧アメリカ文化センターの建物を利用して誕生したシネマテーク
©Coll. Cinémathèque française

MMF : 現在までの経歴、そして「シネマテーク・フランセーズの映画博物館のコミッショナー、そして所蔵品管理のディレクター」という役割について教えていただけますか?

ローラン・マノーニ氏(以下L.M.) : 歴史専門の出版社に勤務していましたが、映画技術の歴史に関する博士論文を執筆したことを機に、1994年からシネマテーク・フランセーズの旧式カメラのコレクションの担当者になりました。現在は所蔵品管理ディレクターとして映画フィルムのコレクション、そして「ノン・フィルム」と呼ばれる、フィルム以外の映画に関するコレクション(台本、絵コンテ、写真、ポスター、衣装、カメラなど) を担当しています。

▲上映室の様子
©Coll. Cinémathèque française

MMF : 映画博物館のコンセプトは何ですか?

L.M. : まずいえるのは、初期の映画のコレクターたちに敬意を表すことです。まだ映画が重要な分野と考えられていなかった時代に、彼らは映画が芸術作品であることを理解し、フィルムや資料を保存したのです。当時、映画のフィルムやカメラ、ポスターなどを保存しようと考える人は誰もいませんでした。映画は学問や研究の対象ではなかったのです。シネマテーク・フランセーズの創立者アンリ・ラングロワは初期の映画のコレクターたちの意志を継ぎ、映画学の資料として、映画のフィルムや映画に関連するものを収集しました。ラングロワによってつくられたシネクラブは、世界で最も大きな映画機関のひとつへと成長しました。そのため、博物館での展示は初期のコレクター、そしてラングロワに敬意を表しています。所蔵品の数は膨大で、博物館に展示されているのはコレクション全体のわずか1%です。

▲上映室への入口
©Coll. Cinémathèque française

MMF : シャイヨー宮にあった映画博物館(ミュゼ・デュ・シネマ)は火災により1997年に閉鎖しました。シャイヨー宮にあった博物館と現在の博物館(ミュゼ・ド・ラ・シネマテーク)との違いは何ですか? またどのように現在の移転場所を選んだのでしょうか?

▲夕暮れ時のシネマテーク・フランセーズ
©Coll. Cinémathèque française

L.M. : シャイヨー宮と現在の博物館には大きな違いがあります。ラングロワが1972年シャイヨー宮に映画博物館をオープンしたとき、その目的は貴重な所蔵品を並べ、映画誕生初期から1960年代までの世界の映画の歴史をたどることにありました。当時、映画の博物館は世界的にも大変珍しく、その開館は野心的な計画でした。ラングロワはパイオニアだったのです。しかし、火災で建物が焼けてしまったことで、シャイヨー宮からの撤退を余儀なくされました。移転先探しにはとても時間がかかりました。複数の上映室を収容するのに十分なスペースがあり、かつ、建築としても魅力のある建物を探していたためです。そして何年にもわたって探した結果、フランク・ゲーリー(1929-)設計の旧アメリカ文化センターを見つけたのです。博物館の常設展と企画展を同時開催できるスペースがあり、映画図書館、3つの上映室、書店やレストランも併設できる大変広い建物です。これは、まさにラングロワが夢見た通りの施設、大映画博物館です。

▲『月世界旅行』の撮影に使われた衣装
©Coll. Cinémathèque française

MMF : シネマテーク・フランセーズのコレクションの中で、特に紹介したい所蔵品は何ですか?

L.M. : 1902年にマジシャンのジョルジュ・メリエスが撮影した『月世界旅行』の衣装です。この映画は世界的に有名で、伝説的な映画です。当時実際に使われた衣装が残っていることは、わたしたちにとっても驚きなんです。

MMF : 企画展はどのように運営していますか?

L.M. : 3〜4年先まではすでにスケジュールが組まれています。だいたい2014〜2015年頃までですね。企画の際は、多くの方に関心を持ってもらえるように、常に新しい要素を取り入れて、魅力的なものにしようと努めています。企画展には大きく分けて2種類あります。シネマテーク・フランセーズの豊かなコレクションを展示するもの、そして他から所蔵品を借りて展示するものです。例えば、7月31日(日)まで開催中の「スタンリー・キューブリック展」はほとんどの展示品が借りたものです。企画展の準備中、方向性を定めているときに貴重な資料を偶然見つける、といった嬉しい発見や驚きもよくあります。そしてこの発見が映画史に大きく貢献することもあるのです。

▲開催中の「スタンリー・キューブリック展」
©Coll. Cinémathèque française

MMF : 今後の展望について聞かせていただけますか?

L.M. : 来年、博物館に変化があります。「寄贈者のギャラリー」がオープンするのです。現在、活躍中の映画監督たちが最近の撮影で使った大変貴重な品々を寄贈してくださることがよくあるので、そうした品々をすぐに展示していきたいと考えています。例えば、マーティン・スコセッシ(1942-)監督はジョルジュ・メリエスへのオマージュとしての新作映画を撮影中ですが、その撮影に使われた舞台装置を寄贈してくれました。こうした品々を寄贈者のギャラリーで展示する予定です。

MMF : 日本の方たちに何かメッセージをいただけますか?

L.M. : 皆さまのお越しをお待ちしております! 展示品は定期的に入れ替えがあるので、何度いらっしゃっても毎回異なるものを見学できます。それと、もしできれば……日本映画に関する資料をぜひ寄贈していただけませんか? 希少価値のある昔の映画のフィルムやポスターなど、シネマテーク・フランセーズで保存し、映画史の資料として未来に伝えていきたいです。

[FIN]

Update : 2011.5.1 文・写真:依田千穂(Chiho Yoda)
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シネマテーク・フランセーズ

  • 所在地
    51 rue de Bercy 75012 Paris
  • Tel
    +33 (0)1 71 19 32 00
  • Fax
    +33 (0)1 71 19 32 01
  • E-mail
    contact@cinemathequefrancaise.com
  • URL
    http://www.cinematheque.fr
  • 休館日
    火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
  • 映画鑑賞料
    一般:6.5ユーロ
    割引料金:5ユーロ
  • アクセス
    地下鉄6番線または14番線のBercy駅下車

映画博物館

  • 開館時間
    月・水〜土曜日:12:00-19:00
    日曜日:10:00-20:00
  • 入館料
    一般:5ユーロ
    割引料金:4ユーロ
    18歳以下:2.5ユーロ
    *日曜日の10:00〜13:00は無料

MMFで出会えるシネマテーク・フランセーズ

スタンリー・キューブリック展 Stanley Kubrick, l’exposition

  • 会期
    〜2011年7月31日(日)まで
  • 会場
    映画博物館
  • 開館時間
    月・水・金曜日:12:00-19:00
    木曜日:12:00-22:00
    土・日曜日、祝日、4月9日〜26日、
    7月2日〜31日:10:00-20:00
  • 休館日
    火曜日、5月1日
  • 入館料
    一般:10ユーロ
    割引料金:8ユーロ
    18歳以下:5ユーロ
 
 

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