花ひらくエコール・ド・パリの画家たち

学芸員江口氏が選ぶ見逃せないこの3点

ジュル・パスキン《アンドレ・サルモンとモンマルトル》
1921年
北海道立近代美術館
▲モディリアーニと親しかった美術批評家アンドレ・サルモンも若い画家たちの擁護者だった

「花ひらくエコール・ド・パリの画家たち」展の担当学芸員の江口恒明氏に、本展で見逃せない3作品を選んでもらいました。作品鑑賞の助けになる"画家の履歴書"もご紹介します。

ジュル・パスキン《花束をもつ少女》1925〜26年

素早く描かれた流麗な輪郭線が、画家の卓越した素描力を示しています。衣服の紫、ソファーの白などに見られる薄塗りの淡い色彩によって、独特な軽さと輝きをカンヴァスに与えています。こうした軽妙さはパスキン晩年の作品の特徴で、"真珠の光沢"と呼ばれました。パスキンは、カフェでも紙ナプキンやたばこのケースなどに、目にした人や人生のさまざまな場面を描き、常に手を動かしていた"天性の素描家"でした。挿絵画家としても活躍し、アメリカでも評価されたパスキンでしたが、1930年、個展の前日にアトリエで自ら命を絶ちました。この作品に描かれた少女の不安げな一瞬の表情からも、パスキンという画家の繊細な心の動きが見てとれるようです。

ハイム・スーチン《祈る男》1920〜21年

パリを離れ、ピレネー山脈の麓のセレに滞在中に描かれた作品。セレに滞在中の3年間は、モディリアーニ(Amedeo Clemente Modigliani/1884-1920)から紹介された画商ズボロフスキー(Leopold Zborovski/1889-1932)に経済的な援助を受けながら、風景画や人物画を多く描きました。スーチンの特徴のひとつである、ゆがめられた形や激しい筆づかい、強烈な色彩は見られるものの、とても静謐な印象を受ける作品です。画家はリトアニアの貧しくも厳格なユダヤ人家庭に育ちました。《祈る男》からは、そうした宗教的な体験が反映しているようにも見えます。

レオナール・フジタ(藤田嗣治)《二人裸婦》1930年

1913年、27歳の年に渡仏したフジタは、1921年、サロン・ドートンヌに出品した乳白色の作品が好評を得て、画壇の寵児となりました。伝統的な日本画で使う筆を使って、墨で輪郭線を描き、薄く溶いた油絵具で着色するという手法は、フジタの作品の大きな特徴になっています。1931年に出発した南米への旅行前に描かれた大画面の《二人裸婦》は、抑制された色彩で女性の肌の質感を追及した1920年代からの特徴がよく表された作品です。フジタの流麗な線描を、ぜひ間近で堪能してください。

Update :2011.8.16
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  • 会期
    2011年7月16日(土)〜9月4日(日)
  • 会場
    平塚市美術館
  • 所在地
    神奈川県平塚市西八幡1-3-3
  • Tel
    0463-35-2111
  • URL
    http://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/art-muse/
  • 開館時間
    9:30-17:00
    *入場は16:30まで
  • 休館日
    月曜日
    12月25日
  • 観覧料
    一般:800円
    高・大学生:500円
    中学生以下:無料
    毎週土曜日は高校生無料
 

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