ラリックは1909年よりガラス製造をパリ近郊の町コンブ=ラ=ヴィル(Combs-la-Ville)にある工場で行っていました。しかしガラス工芸家としての名声が高まるにつれて工場は手狭となり、ラリックは新たなガラス工場を建設することを決定します。そこで第2の工場の地に選ばれたのが、古くからガラス工芸が盛んに行われていたアルザス地方の町、ウィンジャン=シュル=モデでした。ラリックは周辺地域から有能なガラス工を集め、1921年からこの地でガラス製造を開始します。ラリックはここでガラスの量産を効率的に行い、芸術家であると同時に経営者としての能力も発揮しました。
このウィンジャン=シュル=モデの工場では、現在も200人近い職人たちが働いており、今もなお世界で高い評判を誇るラリック社のガラス作品が製造されています。
2011年7月にオープンしたラリック美術館は、このウィンジャン=シュル=モデのオールベルグ(Hochberg)地区に、19世紀中頃まで存在したガラス工房跡を利用して建設されました。オルセー美術館の改装も手掛けるフランス人建築家、ジャン=ミシェル・ウィルモット(Jean-Michel Wilmotte/1948-)によって設計されたコンクリートとガラスのモダンな建築は、歴史的建造物に指定されている古いガラス工房の建物と一体となって、見事なハーモニーを生んでいます。
館内のギャラリーからは、ウィンジャン=シュル=モデの豊かな自然の景観が広がり、さらに新旧の建物を結ぶ回廊からは草花の植えられた庭園を眺めることができます。自然との調和を意識した、モダンながら落ち着いた印象の美術館です。
ラリック美術館のコレクションにはウィンジャン=シュル=モデで作られたガラス作品のほかにも、ラリックのアール・ヌーヴォー時代のジュエリー作品やデッサンが含まれており、ラリックのキャリア全体をたどることができます。またルネ・ラリックの作品のみならず、マーク・ラリック(Marc Lalique/1900-1977)やマリー=クロード・ラリック(Marie-Claude Lalique/1936-2003)といった、ラリックの後継者の作品も展示されています。そうした作品群は、アール・デコのデザインから現代のデザインまで、90年に及ぶラリック社のガラス作品の歴史を雄弁に物語っています。
650点以上にのぼる展示品の中でもぜひ注目したいのが、ラリックをガラス工芸の世界へと導くことになった香水瓶の展示です。シルヴィオ・デンツ(Silvio Denz)財団の寄託によるこれら230点以上もの香水瓶は、ラリック美術館で初めて一般公開される貴重なコレクションです。
また美術館のテーマ別の展示では、ランプや花器、彫刻、そしてテーブルウエアなど、多様なラリックのガラス作品が集められています。中には自動車のボンネットに付けるカーマスコットなど、ガラス製品としては珍しい作品のコレクションも見ることができます。
美術館の展示はアートの観点だけにとどまらず、ガラス製造の技術についても触れています。製造過程に関する展示やショートフィルムの上映では、大量生産を行いながらもその質の高さを保ち続けているラリック社の、巧みな職人技を発見することができるのです。
- 所在地
40 rue du Hochberg 67290 WINGEN-SUR-MODER - Tel
+33(0)3 88 89 08 14 - Fax
+33(0)3 88 03 42 75 - URL
http://www.musee-lalique.com - E-Mail
info@musee-lalique.com - 開館時間
4月1日〜9月30日:10:00-19:00
10月1日〜3月31日:10:00-18:00
*学校の休み期間中は10:00-19:00 - 休館日
1月、12月25日、月曜日(10月1日〜3月31日) - 入館料
一般:6ユーロ
割引料金:3ユーロ - アクセス
パリのGare de l'Est駅からStrasbourg駅までTGVで約2時間20分。
Strasbourg駅からWingen-sur-Moder駅まで電車で約40分。
Wingen-sur-Moder駅から徒歩15分
- B1Fインフォメーション・センターでは、ラリック美術館およびルネ・ラリックの関連書籍を閲覧いただけます。
- 箱根ラリック美術館
日本最多のラリック・コレクションを誇る
http://www.lalique-museum.com/ - 北澤美術館
諏訪湖畔に建つガラス工芸品が集う美術館
http://kitazawamuseum.kitz.co.jp/
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