パリの版画工房 イデム Idem, l’atelier de lithographie à Paris

20世紀初頭に世界中の芸術家が集った界隈として知られるパリのモンパルナス地区。そのモンパルナスに130年以上にわたって存在する版画工房イデムでは、熟練した職人による伝統的なリトグラフの技術と現代アートのコラボレーションが日々行われています。工房と隣接するギャラリーのイテムは、予約をすればともに訪問が可能です。世界の名だたるアーティストの作品が生まれる舞台をのぞいてみませんか?

130年以上の歴史を持つ 由緒あるリトグラフの工房

▲工房で刷られたリトグラフのポスターが貼られたエントランス

 インク特有の香りに包まれた奥行きのある広々とした工房には、重厚な面持ちのプレス機が並び、天窓から注ぐ自然光のもとで軽快な機械音を奏でています。エミール・ドュフレノワ(Emile Dufresnoy)がこのモンパルナスの地にリトグラフの印刷工房を開いたのは今から130年以上前のこと。1880年の開業以来、この地で今日まで続くリトグラフ工房の歴史が始まりました。ドュフレノワの開業から半世紀後の1930

▲工房の1階半分を覆う大きな天窓

年代、工房は地図の出版を専門に行う会社、ミシャール(Michard)の所有となり、さらに1976年にはパリで有名な老舗の版画工房へと引き継がれます。それがマティス(Henri Matisse/1869-1954)、ピカソ(Pablo Picasso/1881-1973)、ミロ(Joan Miró/1893-1983)、シャガール(Marc Chagall/1887-1985)、ジャコメッティ(Alberto Giacometti/1901-1966)など、20世紀を代表する巨匠たちがリトグラフの制作を行ったことで知られるムルロー工房(Imprimerie Mourlot)でした。現在の工房イデムは、この近代美術史上にも名を刻むムルローの光輝ある版画工房をそのまま継承した貴重な場所。ひとたび足を踏み入れれば、工房の歩んだ歴史を肌で感じることができます。

▲古いプレス機が並ぶ工房1階の風景

 1880年にドュフレノワによって建てられた工房の建物内には、ミシャール時代に刷られた大判の地図、ムルロー時代に偉大なアーティストの傑作を生み出したプレス機、そして至る所に貼られているリトグラフのポスター類と、各時代の余韻が随所に残されています。中でも工房の壁一面に積まれた何トンにも及ぶ石版のストックは、マティスやピカソが使用した石も含まれると想像されるロマン溢れる貴重な代物。大小さまざまな大きさを持つ分厚いこれらの石版は、由緒ある版画工房の歴史の重みを体現しているかのようです。

 

▲工房の壁一面に積まれた石版

 1997年に現在のオーナーへと代わりイデムの名を冠してからも、この工房はムルロー時代に引き続き、リトグラフとアートとのつながりを強く保ち続けています。現在もなお世界中のアーティストがここを訪れ、伝統的な技術を駆使する職人たちとともにリトグラフの制作を行っています。歴史の詰まった工房の中で感じることのできる特別な匂い、音、風景に身を包まれながら、アーティストたちは強くインスピレーションをかき

 

▲印刷中に落ちた多色のインクが氷柱状になっているプレス機の一部

立てられ、この工房の中でしかひらめくことのできない作品を生み出しています。

Update : 2012.3.1
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イデム(工房) Idem

イテム(ギャラリー) item

 

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