ゲテ・リリックは、地下1階、地上7階、総面積13,000uもの巨大な空間で、大きな「道具箱」のような形をしています。施設全体にスピーカーや照明、ICタグ(RFID)のセンサーなど、最新の技術を駆使したインフラが整えられており、アーティストたちが自在に活用することができます。空間、電源、光、といったさまざまな制約をともなう大型のデジタル・アートを展示できるような場所は、パリでもほかにはあまりありませんが、ここでは、例えば建物全体に音楽を大音量で流し、ディスコのように使うこともできます。
開館時間中、来館者に無料で開放されているのが1階から3階。資料室やゲームコーナーが人々の人気を集めています。また、取材当日には地下1階で展覧会の準備が行われていましたが、その様子は1階のホールから通りすがりの人たちが見られるようになっていました。
3階へ上がると19世紀の面影を濃く残すカフェと、大ホールがあります。カフェは洗練されたパリらしい空間が心地よく、開放的で静かなので、仕事の打ち合わせに利用する方も多いようです。大ホールは、パリで最もハイテクを駆使したホールとして、現代音楽を中心に、週に3回コンサートが行われています。ゲテ・リリックは劇場としての役割も、しっかり受け継いでいるのです。
ゲテ・リリックでは音楽家やビジュアル・アーティストを含め、年間100人ほどのさまざまな分野に携わる国際色豊かなアーティストが活動しています。昨年12月に開催されたベルリン発祥のフェスティバル、「Pictoplasma」のポスターに使われたのは、ニューヨーク在住の日本人映像作家、中村元道でした。また、オープンの年の2011年度には、カナダで活躍する注目の若手メキシコ人アーティスト、ラファエル・ロサーノ=エメール(Rafael Lozano-Hemmer/1967‐)が招待され、講演会や展覧会を行いました。彼の作品は、インスタレーション、建築、彫刻、デジタル・アートを織り交ぜた、多彩な表現方法が特徴です。空間、電源、光といったさまざまな制約をともなうこうした大型のデジタル・アートを展示できるような場所は、パリでもあまりありません。ゲテ・リリックを訪れた観客たちは、自分の影が音や映像になり、作品の一部になっていくという、ユニークな体験をすることができました。
アーティストだけでなく、ベルリンという「街」を招聘して企画を行うなど、型破りなイベント作りが特徴的で目が離せないゲテ・リリックですが、今秋には、「Hello™H5」というユニークな企画が開催されます。これは現代の消費社会を揶揄する、というテーマで、一般企業H5をパートナーとして招待し、仮想ブランド「Hello™」を作って彼らがゲテ・リリック全体を運営していく、というプロジェクトです。まるで「劇中劇」のように、その「ブランド」が施設全体を乗っ取り、約2ヵ月半の会期中に、ディベートやブティックの運営、そこで販売されるCDや書籍の制作、コンサートやワークショップが行われます。
内部にも外部にも開かれたデジタル文化の殿堂、ゲテ・リリック。現在は主にパリ近辺から訪れる人がほとんどですが、日本からの方々にもぜひ足を運んでいただきたい、というメッセージをゲテ・リリック館長から預かりました。少し違ったパリの姿が見られることでしょう。
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- 所在地
3 bis rue Papin 75003 Paris - Tel
チケット窓口
+33(0)1 53 01 51 51
総合窓口
+33(0)1 53 01 52 00 - URL
http://www.gaite-lyrique.net/ - 開館時間
14:00-20:00
火曜日は22:00、日曜日は18:00まで - 休館日
月曜日 - 入館料
無料
ワークショップ、コンサート、講演会などは別途要入場料 - アクセス
地下鉄3、4番線Réaumur-Sébastopol駅または地下鉄3、11番線Arts et Métiers駅下車 - 展覧会情報
「Hello™H5」
2012年10月11日〜12月30日
*情報はMMMwebサイト更新時のものです。予告なく変更となる場合がございます。詳細は観光局ホームページ等でご確認いただくか、MMMにご来館の上おたずねください。