現代アートの祭典「ラ・トリエンナーレ」、「サン・キャトル」と「パリの現代アート」をテーマにお送りしている特集。その第3弾となる今月は、「デジタル・アート」を専門とするフランスで初めてのアートセンター「ゲテ・リリック」をご紹介します。「デジタル・アートの実験室」として常に人々を驚かせるような斬新な企画が行われ、情報通のパリっ子たちの間でも、いつ訪れても刺激を受けられる場所として話題のスポットです。
2011年3月、ポンピドー・センターやマレ地区のほど近く、おしゃれなパリっ子たちが集まるパリ3区にユニークな現代アート施設がオープンしました。通りに面した入口ファサードの建築はクラシカルな雰囲気ですが、一歩中に入ると21世紀の技術を駆使した現代建築の空間が広がります。
このアートスポットの名は「ゲテ・リリック」。もともとは18世紀にまで遡る歴史ある劇場で、一時はかの有名な作曲家オッフェンバック(Jacques Offenbach/1819-1880)が館長を務めたこともあるオペレッタの殿堂。質の高いオペレッタを上演して市民に愛されて「オペレッタ劇場」を意味する「ゲテ・リリック」の愛称で呼ばれるようになり、これが後に劇場の正式名称となったのです。1920年代には当時のヨーロッパに旋風を巻き起こしていたバレエ・リュッス(ロシア・バレエ団)の公演が行われたこともありました。
しかし、第2次世界大戦中にはドイツ軍の占領下で略奪に遭い、劇場としての機能を失ってしまいます。その後、1970年代にはサーカスの学校が入ったり、80年代には(数週間で閉鎖になりましたが)アミューズメントパークとしてオープンしたりと、紆余曲折を経た後、ゲテ・リリックは埃をかぶった廃墟のような状態に陥ってしまいます。
その再建計画が動き出したのは2001年。パリ市がゲテ・リリック改装計画に着手してからのことです。翌年には再建プロジェクトチームが発足し、第1回白夜祭ニュイ・ブランシュ(Nuit Blanche/パリ市が年に一回企画する、夜通し行われる文化イベント)では大型のプロジェクターを使ったインスタレーションがゲテ・リリックを舞台に行われました。2003年からは女性建築家マニュエル・ゴートラン(Manuelle Gautrand)の指揮のもと、本格的に再建に向けて動き出すこととなりました。
そして、2007年にジェローム・デロルマス(Jérôme Delormas)氏*が総支配人に任命され、2010年に工事が終了。2011年3月にオープンし、かつてのオペラの殿堂は現代アートのための空間としてよみがえったのです。
*ニュイ・ブランシュなど、数々の文化省のミッションを経験し、京都の関西日仏学館(現・アンスティチュ・フランセ関西)の館長を務めたこともある人物。
- 所在地
3 bis rue Papin 75003 Paris - Tel
チケット窓口
+33(0)1 53 01 51 51
総合窓口
+33(0)1 53 01 52 00 - URL
http://www.gaite-lyrique.net/ - 開館時間
14:00-20:00
火曜日は22:00、日曜日は18:00まで - 休館日
月曜日 - 入館料
無料
ワークショップ、コンサート、講演会などは別途要入場料 - アクセス
地下鉄3、4番線Réaumur-Sébastopol駅または地下鉄3、11番線Arts et Métiers駅下車 - 展覧会情報
「Hello™H5」
2012年10月11日〜12月30日
*情報はMMMwebサイト更新時のものです。予告なく変更となる場合がございます。詳細は観光局ホームページ等でご確認いただくか、MMMにご来館の上おたずねください。