▲ベルト・モリゾ
《ジュリー・マネと愛犬のグレーハウンド「ラエルト」》
1893年 油彩 73×80cm
マルモッタン美術館蔵
©Musée Marmottan Monet, Paris / The Bridgeman Art Library
展覧会のハイライトは、マネの弟ウジェーヌ(Eugène Manet/1833-1892)とモリゾとの間の一人娘ジュリー・マネ(Julie Manet/1878-1966)の展示室です。モリゾは才能のある画家でしたが、一人娘ジュリーを残して54歳で他界しました。夫のウジェーヌもモリゾの3年前に他界していました。16歳で孤児となったジュリーは、モリゾの友人のルノワール、エドガー・ドガ(Edgar Degas/1834-1917)、詩人のステファヌ・マラルメ(Stéphane Mallarmé/1842-1898)を後見人として、その後画家のエルネスト・ルアール
▲ピエール=オーギュスト・ルノワール
《ジュリー・マネの肖像》
1894年 油彩 55×46cm
マルモッタン美術館蔵
©Musée Marmottan Monet, Paris / The Bridgeman Art Library
(Ernest Rouart/1874-1942)と結婚し、美術界と関係を持ち続けます。赤ん坊のときから娘の成長を作品に残してきたモリゾは、未完のジュリー像を残して他界しました。展示室には、その未完の作品をはじめ、ルノワールが描いたジュリー像、モリゾが描いた思春期のジュリー像が並んでいます。
▲メアリー・カサット
《ボックス席にいる真珠のネックレスの女》
1879年 油彩81.3×59.7cm
フィラデルフィア美術館蔵(1978年シャーロット・ドランス・ライト遺贈)
Philadelphia Museum of Art Bequest of Charlotte Dorrance Wright, 1978
ジュリーを介して、印象派の画家たちのサークルが見えてきます。ジュリーの夫ルアールの父、アンリ・ルアール(Henri Rouart/1838-1912)も画家で、印象派を支援したコレクターでもありました。
展覧会の終盤近くの展示室には、ルアールとジュリーのカップルと、ジュリーのいとこでモリゾの姪のジャンヌ・ゴビヤール(Jeanne Gobillard)と詩人のポール・ヴァレリー(Paul Valéry/1871-1945)のカップルという2組の合同結婚の記念写真があり、印象派と文学界の結びつきの強さも証明しています。
会場には、このほか、子どもの肖像や社交場での女性たちの肖像があります。メアリー・カサット(Mary Cassatt/1844-1926)が描いた《ボックス席にいる真珠のネックレスの女》は、男性画家が描いた女性像に比べると異色で、飾らない等身大の女性が感じられます。
人間関係や人物の解説が面白く、印象派を見慣れた人でも新たな発見があるでしょう。
15世紀から17世紀までのフランス、イタリア、フランドル美術と、18世紀と19世紀のフランス美術のコレクションが見られる常設展の充実ぶりもさることながら、特別展の質が高いので、わざわざパリから足を運ぶ価値のある美術館です。今年から、天井の高い温室のような中央ホールに、地元のレストランが経営する新鮮な食材を使ったカフェテリアがオープンしました。
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Update : 2016.8.1 文・写真 : 羽生のり子(Noriko Hanyu)
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