アルザス地方、コルマール市にあるウンターリンデン美術館は、グリューネヴァルト(Grünewald)ことマティス・ゴートハルト・ニートハルト(Mathis Gothart Nithart / 1475〜1480-1528)作《イーゼンハイムの祭壇画》で有名です。この作品を見るために世界中から美術愛好家が訪れ、フランスの地方美術館の中でも年間入館者数最多を誇る美術館の一つに数えられています。3年間の改装増築工事後、2015年12月にリニューアル・オープンした美術館の見どころと、それを引き立たせる建築についてご紹介します。
13世紀のドミニコ派女子修道院を改装して1853年に開館したウンターリンデン美術館は、スイスの建築事務所、ヘルツォーク&ド・ムーロン(Herzog & de Meuron)により、先史時代から現代までを包括するモダンな美術館に生まれ変わりました。修道院の中庭を囲む回廊部分の展示室は、11世紀から16世紀までの美術の部で、どの展示室からも庭が見られる、明るい造りになりました。
「絵画、彫刻と分野別に展示していたのを、改装後は時代別に分類しました。また、地元出身の画家、マルティン・ショーンガウアー(Martin Schongauer/1445頃-1491)の展示室を新設しました」と言うのは、パンチッカ・デ・パップ(Pantxika De Paepe)館長です。
ショーンガウアーはコルマールの銀細工師の家に生まれ、父の工房で銀細工技術をしっかりと身につけました。その後絵画を習得し、フランドル地方で初期フランドル派の美術に触れます。当時としては生前に名声を得た数少ない画家の一人で、後続の画家たちに大きな影響を与えました。「《受胎告知》のマリアの表情を見て分かるように、彼の画風は優雅です。一方、百合の写実的な描き方には初期フランドル派の影響があります」とデ・パップ館長は解説します。
また、ショーンガウアーの銅版画作品も見逃せません。アルブレヒト・デューラー(Albrecht Dürer/1471-1528)が1492年にコルマールを訪れたとき、銅版画で師と仰いでいたショーンガウアーに会おうと探したというエピソードが残っているほどの大画家でした。ウンターリンデンにあるショーンガウアーの銅版画作品87点は、3ヵ月おきに交代で展示されています。
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Update : 2016.10.1 文・写真 : 羽生のり子(Noriko Hanyu)
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