Dossier special - 海外の特集

  • 1.モダンデザインの金字塔 バウハウス
  • 2.中世に倣ったバウハウスの造形教育
  • 3.バウハウスのエスプリが生んだデザイン

パリ装飾芸術美術館―バウハウスのエスプリ展

バウハウスのエスプリが生んだデザイン

バウハウスに存在したあらゆる分野の工房

▲マルセル・ブロイヤーのデザインしたパイプ椅子「ワシリー・チェア」1927年
© Ulrich Fiedler / Photographie, Martin Müller

 家具、陶磁器、金属、ガラス、壁画、彫刻、テキスタイル、タイポグラフィー、広告、写真、舞台など、バウハウスの専門課程である工房は多彩な分野に分かれていました。本展では素材の研究や、色、リズム、動きの課題、模型やテキスタイルの見本、タイポグラフィーの試作などと並行して、工房で制作された作品の数々を展示しています。造形を学ぶ学校としてのバウハウス、作品を生み出す工房としてのバウハウス、これら2つの側面を同時に鑑賞することで、バウハウスのエスプリをより鮮明に感じ取ることができる展示内容です。

▲ウィルヘルム・ワーゲンフェルド(Wilhelm Wagenfeld/1900-1990)デザインのテーブルランプ 
1923年〜1924年 
© Centre Pompidou, MNAM-CCI, Dist. RMN-Grand Palais / Jean-Claude Planchet / A.D.A.G.P. 2016

 家具の工房の展示でぜひ注目したいのは、バウハウスの卒業生のひとり、マルセル・ブロイヤー(Marcel Breuer/1902-1981)による有名なパイプ椅子です。現在も見慣れている工業デザインがバウハウスを起源としている場合は珍しくありません。例えば展示にあるテーブルランプも、現在頻繁に見かけることのできるデザインです。機能性を備えた完成度の高い工業デザインは、流行りや廃りなく、永く日常に生き続けることが証言されています。
 またテキスタイルの工房の展示で存在感を放っているのは、バウハウスのディプロマを取得後、女性初のマイスターとなったグンタ・シュテルツル(Gunta Stölzl/1897-1983)によるタピスリーです。これは1枚の織物にシルク、コットン、ウールの3つの異なる素材を使用している手の込んだ代物。幾何学のモチーフと豊かな色彩は、カンディンスキーの予備課程の課題を思わせます。素材の研究、色、形のコンポジションと、バウハウスのエスプリの基礎を体現したような作品です。
 そして工房の作品であると同時に、貴重なバウハウスの資料でもあるのが、写真の数々です。斬新な構図や遊び心あふれる被写体のポーズ、自然に生まれた学生たちの笑顔など、バウハウスのユートピア的な校風が作品から滲み出ています。当時のドイツ社会の不穏な空気とは対照的に、バウハウス内では創造意欲に満ちた若者らが自由を謳歌していたことが伝わってきます。

▲グンタ・シュテルツル作のジャガード織りのタピスリー 1928年
© St Annen-Museum / Fotoarchiv der Hansestadt Lübeck

▲バウハウスの工房のバルコニーから撮った学生たちの写真 作者不詳 1927年
© Bauhaus Archiv Berlin

現在もアート界に息づく
バウハウスのエスプリ

▲マチュー・メルシエ氏によってセレクションされた現代作家の作品の一部
Les Arts Décoratifs, exposition 《L’esprit du Bauhaus》, 2016-photographie : Luc Boegly

 本展の終盤に待ち受けているのは、フランス人アーティストのマチュー・メルシエ(Mathieu Mercier)氏によって選ばれた、1960年代以降に生まれた約50人の現代作家のクリエーションです。中にはジュンヤ・ワタナベ(Junya Watanabe/1961-)など、日本人デザイナーの作品も含まれています。直線や円を多用したシンプルなライン、素材を生かしたデザイン、また調和のとれたカラフルな色合いなど、バウハウスを匂わせる独特の奇抜さが光る作品が集められています。バウハウスのエスプリが確実に受け継がれ、今も分野を問わずアート界全体に息づいていることを改めて発見できる興味深い展示内容です。

[FIN]

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Update : 2017.1.5 文・写真 : 増田葉子(Yoko Masuda)ページトップへ

「バウハウスのエスプリ」展

会期
2016年10月19日(水)
〜2017年2月26日(日)
所在地
パリ装飾芸術美術館
107, rue de Rivoli – 75001 Paris
TEL
+33(0)1 44 55 57 50
URL
http://www.lesartsdecoratifs.fr
開館時間
11:00-18:00
※木曜は企画展と宝飾ギャラリーのみ21:00まで開館
休館日
月曜日
入場料
一般:11ユーロ
割引:8.5ユーロ
アクセス
地下鉄1番線または7番線Palais Royal - Musée du Louvre駅から徒歩3分
※この情報は2017年1月更新時のものです。
MMMで出会える「バウハウスのエスプリ」展
MMMライブラリでは、本展のカタログの他バウハウスの関連書籍を閲覧いただけます。
書名:L'esprit du Bauhaus(邦題:バウハウスのエスプリ)
出版社:Les Arts Decoratifs
ページ数:264ページ
言語:仏語
概要:2016年10月から翌年2月までパリの装飾芸術美術館で開催された同名の展覧会図録。
*パンフレットもご用意しております。
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