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モネの作品を訪ねるフランスの旅 オルセー美術館とマルモッタン美術館が選ぶ モネを知るための名作
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モネ《日傘の女性》1886年
©Photo RMN/H.Lewandowski/digital file by DNPAC

 モネが肖像画や人物画を手がけることは少なかったが、1886年には例外的に、丘の上にいると見られる一人もしくは複数の人物を下から見上げるかたちで捉えた絵を何枚か制作している。エルネスト・オシュデとアリス・オシュデとの娘ジェルメーヌの回想によれば、こうした構図の着想が生まれたのは一家が船で遠足に出かけたときのことで、モネが小船を係留しているあいだ、ほかの家族は土手を登り彼を見下ろしていたという。ある個人コレクションにはこの挿話を描いたべつの作品が所蔵されているが、そこでは前景の草むらの上にジェルメーヌ・オシュデとシュザンヌ・オシュデの姿があり、そこからさらに遠くにアリス・オシュデとモネの次男ミシェルが見える。
 2枚の縦長の画面形式の大きな絵が連続して描かれ、そのうちの1点がここにあげた作品である。モネの最も好んだモデル、シュザンヌ・オシュデの姿が、ジヴェルニーの近くのオルティエ島の土手の上に置かれている。白い衣服に身を包み、緑の裏地のついた白い日傘で日差しをさえぎり、優雅な身のこなしで風にさからいながら立つこの若い女性は(当時18歳だった)、ときならぬそよ風の錯覚を強める筆遣いを並べて描かれた澄んだ空の上へと上昇していくかのようである。強い光、白い服に落ちる影は色として捉えられ、それらは《庭の女性たち》(1866年、パリ、オルセー美術館)を発端とする、風景の中に人物を配置するための初期の試みとも結びついているが、地中海地方の旅のあいだに獲得された色彩感覚によってまったく新しいかたちで解釈しなおされている。



2007年4月7日から6月2日まで新東京国立美術館で開催中の「大回顧展モネ 印象派の巨匠、その遺産」のカタログより抜粋。
( オルセー美術館並びに、同展主催者の承諾のもと掲載。)
同カタログは、MMFブティックにてお求めいただけます。
 
   
   
   
   
   
   
 

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