アドリアン・デュブーシェ国立陶磁器博物館

アドリアン・デュブーシェとともに歩んだ博物館の歴史

▲博物館のエントランスにあるアドリアン・デュブーシェの像

 1845年にリムーザン考古学歴史学会(La Société d'archéologie et d'histoire du Limousin)によって創設されたリモージュの博物館に、陶磁器の部門が加えられたのは1852年のことでした。その後、1865年にアドリアン・デュブーシェ(Adrien Dubouché)が館長に就任すると博物館は大きな転機を迎えます。

 リモージュ近郊の町ジャルナック(Jarnac)出身のデュブーシェは、実業家であると同時に熱心な美術愛好家でもあり、芸術の中心パリに定期的に出向いては、文化サークルで著名な収集家や評論家などの文化人と交流を結んでいました。デュブーシェ自身は陶磁器に魅せられた収集家であり、博物館館長に就任した翌年の1866年には、400点もの個人コレクションを博物館へ寄贈しました。さらに1868年には博物館併設の装飾美術学校を創立し、製陶業のためのアーティストの育成にも力を注ぎました。

▲デュブーシェが寄贈したセーヴルの磁器の装飾板 1877年
©RMN / Guy Gendraud

 1875年に著名な陶磁器の収集家、アルベール・ジャックマール(Albert Jacquemart)が亡くなった際、デュブーシェは彼の重要なコレクションをすべて購入し、博物館にそっくり寄贈します。リモージュ市はこうしたデュブーシェの博物館への類ない貢献を称える目的で、博物館に彼の名を冠することを決定。以降も彼の寄贈は続き、最終的にデュブーシェによって博物館へと寄贈されたコレクションは4,000点にも上りました。

イタリア風のファサードを持つ博物館の建築

▲イタリア風のファサードが印象的な博物館の外観
©RMN / Frédéric Magnoux

 博物館の拡充に尽力したデュブーシェが亡くなった1881年、博物館はその豊富なコレクションが評価され、併設の装飾美術学校とともに国立の機関として生まれ変わります。コレクションが国の管理となるのをきっかけに、博物館の建物は新築されることが決まり、1869年以来博物館が入っていた旧ホスピスの建物は取り壊され、1896年に建物の新築工事が始まりました。

▲奥の窓から十分に光を取り入れた1階のギャラリー 
©RMN / Jean-Gilles Berizzi

 1900年に落成した博物館の建物は、現在も当時と変わらない佇まいを保っています。イタリアの建築からインスピレーションを受けたといわれる建物には、1階部分に連なるアーチ、2階部分の壁に「ズグラッフィート」と呼ばれる泥漿(でいしょう)を用いた装飾が施されています。陶磁器の展示を目的に設計された1階は、アーチ形の窓から十分な採光がなされているのに対し、彫刻や絵画の展示を目的として設計された2階は、天窓からの採光がなされ、壁には大きな窓がないのが特徴です(現在、彫刻、絵画はリモージュ市立美術館が所蔵)。また館内の床や天井は、1900年当時に隆盛を極めたデザインの流れであるアール・ヌーヴォーを意識したモザイクで彩られています。

▲「リモージュに捧ぐ」と記されたエントランスの床のモザイク 

 現在、博物館は併設されていた装飾美術学校が大学のキャンパスへ移転するのに伴い、その跡地を利用した拡張工事が進められています。2012年には展示スペースがより広がり、さらに充実した内容で私たちを迎え入れてくれる予定です。

館内は床や天井のモザイクに加え、美しいステンドグラスでも装飾されています。エントランス正面の階段の踊り場にあるのは、リモージュ市の紋章がデザインされたマルセル・ドゥロン(Marcel Delon)によるステンドグラスです。

▲ステンドグラスから差し込む柔らかな光が館内を包み込む
 
 
Update : 2011.3.1
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アドリアン・デュブーシェ国立陶磁器博物館

  • 所在地
    8 bis, place Winston Churchill 87000 Limoges
  • Tel
    +33(0)5 55 33 08 50
  • Fax
    +33(0)5 55 33 08 55
  • URL
    http://www.musee-adriendubouche.fr/
  • 開館時間
    10 : 00-12 : 25、14 : 00-17 : 40
  • 休館日
    火曜日、1月1日、12月25日
  • 入館料
    一般:4.5ユーロ
    割引料金:3ユーロ

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