アドリアン・デュブーシェ国立陶磁器博物館

4つの種類に分類されるセラミックのコレクション

▲セーヴル製陶所のギマール(Hector Guimard)作のb器。
《ビネルの壺》 1903年
©RMN / Guy Gendraud

 フランスで陶磁器類の総称として使われるセラミック(céramique)には、大きく分けて4つのカテゴリーが存在します。古代ギリシアのテラコッタの土器や、中世の有名な陶工、ベルナール・パリシー(Bernard Palissy)の施釉(せゆう)陶器を含む「ポトリー(poterie)」、温かみのある独特な質感が特徴の砂岩で作られる「b器(せっき)(grès)」、加工した粘土に錫釉(すずぐすり)をかけて焼き上げる「ファイアンス(faïence)」、そしてカオリンを材料に含む「磁器(porcelaine)」の4種類です。博物館の展示の導入部にあたる1階左手のギャラリーでは、こうした陶磁器が種類別に展示されており、セラミックの基本から学ぶことができます。

▲北斎の版画をコピーしたフェリックス・ブラックモン(Felix Bracquemond)作のファイアンス。《ルソーの食器セット》 1866年  
©RMN / Jean-Gilles Berizzi

 博物館の2階では、地域別、製陶所別にファイアンスと磁器のコレクションが分類されており、それぞれの地域の特色が分かる展示となっています。ファイアンスの展示ではイタリアのマヨリカ焼(Majolique)や、イスラムのイズニク(Iznik)など、ひと目でそれと判別できる独特な色合いと装飾のスタイルを持つコレクションが印象的です。磁器の展示では、やはりドイツのマイセン(Meissen)やフランスのセーヴル(Sèvres)といったヨーロッパの重要な製陶所の作品が見逃せません。とりわけセーヴルの磁器は、濃いブルーやエメラルドグリーンなどのエレガントな彩色が施されており、ほかの製陶所と一線を画す豪華で洗練されたオーラを放っています。

▲イタリアのファイアンス マヨリカ焼の皿 1540年-1550年頃
©RMN / Hervé Lewandowski
▲セーヴル製陶所の磁器。《カップと受け皿》 1777年
©RMN / Jean-Gilles Berizzi

リモージュ焼の200年の歴史をたどるギャラリー

▲パリ万博に出品されたプーヤ製陶所の磁器「グラン・ド・リ」のセット 1878年
©RMN / Guy Gendraud

 リモージュ焼のギャラリーが、博物館の最も重要なセクションであるのはいうまでもありません。18世紀末から現在に至るまでの、ありとあらゆるスタイルのリモージュ焼がこのセクションに集められています。

 18世紀のアルトワ伯爵時代のリモージュの磁器に注目すると、小さな花のブーケや金の縁取り装飾を使用したものが大多数を占めています。また金の装飾と並行してブルーのラインが入っているのも、この時代のリモージュ焼の特徴です。

▲《「グラン・ド・リ」の楕円皿》 1878年
©RMN / Jean-Gilles Berizzi

 19世紀に入ると、複数のメゾンの競争に伴い、磁器のデザインや用途は幅広いものへと移り変わっていきます。展示品には贅沢な装飾が施された壺や胸像などの彫刻も見られ、リモージュの磁器が、食器にとどまらず、室内の装飾芸術としても発展していく様子を確認することができます。

▲リモージュの磁器でできたバスケット 1830年-1848年頃
©RMN / Jean-Gilles Berizzi

 またこのギャラリーでは装飾的なデザインや色付けがなされた作品とは対照的に、真っ白な作品が多いことにも気付かされます。これはリモージュの磁器が、豪華な彩色が施された食器に引けをとらない、よどみのない純白の美しさを持っていたからこそ実現できたものです。1878年のパリ万国博覧会に出品されたプーヤ社のテーブル装飾の一式は、純白のリモージュ焼の代表作のひとつで、「グラン・ド・リ」(<ひと粒の米>の意味)と呼ばれる七宝による透かし模様が入った手の込んだ作品です。

▲アヴィランド(Haviland)社の磁器。《人の頭の形をしたタバコ用容器》 1850年頃 
©RMN / Jean-Gilles Berizzi

 19世紀末から20世紀前半にかけては、アール・ヌーヴォーやアール・デコといった時代の流れに乗ったデザインが見られるほか、次第に実用的なフォルムやデザインのものが現れてきます。第二次世界大戦後には現代画家やオートクチュールのメゾンとコラボレーションした磁器作品なども見られ、こうした展示品からはリモージュの磁器が伝統産業としてだけでなく、未来に向けたアートの表現手段としても可能性を秘めていることが伝わってきます。

矢車菊の小さな花があちこちに施された「バルボー(barbeaux)」と呼ばれる模様は、18世紀から頻繁に磁器に使用されますが、とりわけフランスの王妃、マリー=アントワネット(Marie-Antoinette)が愛したことで知られています。

▲《水差しと受け皿、バルボー柄(バラ)》 1778年-1796年頃
©RMN / Hervé Lewandowski
 
 

[FIN]

Update : 2011.3.1 文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)
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アドリアン・デュブーシェ国立陶磁器博物館

  • 所在地
    8 bis, place Winston Churchill 87000 Limoges
  • Tel
    +33(0)5 55 33 08 50
  • Fax
    +33(0)5 55 33 08 55
  • URL
    http://www.musee-adriendubouche.fr/
  • 開館時間
    10 : 00-12 : 25、14 : 00-17 : 40
  • 休館日
    火曜日、1月1日、12月25日
  • 入館料
    一般:4.5ユーロ
    割引料金:3ユーロ

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