2010.8.17(火)

レトロな空間で味わうフランス児童文学
国際子ども図書館

厳しい暑さが続くこの時期、都心の避暑地として人気なのが、映画館、美術館、水族館、そして図書館。無料で気兼ねなくゆったりと過ごすことができ、静かで落ち着いた空間は、まるでオアシスです。
今回訪問した東京・上野の「国際子ども図書館」は日本で初めて開館した児童書を専門にした国立の図書館です。休日に何度か足を運んだことのあるスタッフTは今回MMFwebサイトをご覧の皆さまに、ぜひお勧めしたいスポットとして取材してきました。

国際子ども図書館は、国立国会図書館(東京・永田町)の支部図書館として今からちょうど10年前の2000年に設立されました。国内外の児童書、それらに関連した資料や、児童書の目録データベースやデジタル画像といったデジタル・アーカイブを収集・提供するなど、幅広いサービスを行なっています。

明治の煉瓦建築の国際子ども図書館は、「帝国図書館」として1906年に建てられ、現在は東京都の歴史的建造物として認定されています。
ルネサンス様式の建物には、明治時代のレトロな雰囲気が漂います。
天井や壁、柱などの漆喰装飾、さらに階段の手すり、ドアにまで細やかな工夫が施されています。右に見えるのは、100年近く館内を照らし続けるシャンデリア。
ドアには「おす登(と)あく」と書かれたプレートが。ドアがまだ珍しかった時代の名残です。

館内には3つのフロアがあり、子どもたちに本の読み聞かせを行う<おはなしのへや>、世界の国々の文化や歴史、地理などを理解するための<世界を知るへや>、子ども向けの本が並んだ<子どものへや>、大人や研究者が利用するための資料室、メディアコーナーなど…目的に合わせて各フロアのそれぞれの「へや」で児童書に触れることが出来ます。

子ども向けに書かれた美術書も充実している1F<子どものへや>。影を作らない特殊なライティングと円い家具が印象的です。

フランスの児童書はというと、図書資料をはじめ雑誌や電子資料を含め約5,000件のフランス語の資料を所蔵しています。また、日本語で書かれたフランスに関連した本は約300冊。フランスの絵本はもちろんのこと、私たちにもなじみのあるロングセラー絵本「ぐりとぐら」(Les aventures de Guri et Gura)や「あさえとちいさいいもうと」(Aya et sa petite sœur)など日本語の絵本を仏訳したものまでラインナップは豊富です。「実はフランスは、ヨーロッパで最も多く日本語の児童書を出版してきた国なのです」と話してくれたのは、企画広報係の檜山さん。語学の勉強にもなりそうな貴重な資料が揃っています。

<世界を知るへや>には、フランス文化に関する本も置いてあります。「フランスってどこ?」という子は地球儀で探して当ててみましょう。
アジア以外の外国で発行された児童書が閲覧できる2F第二展示室。
フランスの子どもなら誰でも知っているジャン・ド・ラ・フォンテーヌの寓話。こちらは1839年に出版されたもの。

ただいま図書館3階の展示室<本のミュージアム>では、図書館の開館10周年と国民読書年を記念した展示会「日本発☆子どもの本、海を渡る」展を9月5日(日)まで開催しています。

円形の展示棟が特徴的な<本のミュージアム>。

本展では、日本の児童書が海を渡った先の国々で、どのように紹介されているのかを30以上の国や地域で出版された日本の児童書と原書を約300点紹介しています。中には、元気で勇敢な桃太郎をイメージキャラクターとして取り入れ、フランスの健康食品会社の宣伝用に19世紀に翻訳されたフランス語版『桃太郎』(Aventures de Momotaro)を発見しました。子ども用食品「フォスファティンヌ」のおかげで桃太郎のようになれる、という意味がこめられているのだそうです。

来館の記念にもなる、フランス語版『桃太郎』のポストカード。

次に注目したのが、海外8カ国で翻訳されている松岡享子作『おふろだいすき』。フランス語版には、日本のお風呂を知らない子ども達のために、お風呂の「フタ」についての説明が加えられています。絵と文字で国の文化や習慣がわかりやすく紹介されています。

『おふろだいすき』 (Le bain de Mako
Nicole Coulom 訳 フランス l'école des loisirs ©1986

「フランス語はわからない」、「美術はあまり知らない」、「文学には興味ない」という人でも、絵本ならわかりやすく、そして楽しく理解できます。上野公園や美術館、動物園へ出かけるたびに、訪れたい場所です。

 
MMFのインフォメーション・センターには、美術に関するフランスの児童書を多数取り揃えています。こちらもどうぞお見逃しなく!
 
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