2011.12.1(木)

ルーヴル美術館でプレミア上映され、
世界中の美術ファンが注目する映画『ブリューゲルの動く絵』。

インタビューの模様(部分)

映画『ブリューゲルの動く絵』より

10月の東京国際映画祭の特別招待作品でもあったこの作品、今年2月にはパリのルーヴル美術館でプレミア上映されました。そこで今回は、12月の映画公開よりひと足早く来日したレフ・マイェフスキ監督にそのあたりのいきさつなどについてお聞きしました。



MMF(以下M):
ルーヴル美術館でこの作品がプレミア上映された時の様子などをおしえていただけませんか。

マイェフスキ監督(以下監督):
ルーヴル美術館のオーディトリアムで上映されたのですが、超満員の観客ですごい熱気でしたよ。まずそれに驚きました。そしてこの映画に聖母マリア役で出演しているシャーロット・ランプリングがユーロスターでこの上映のスピーチのために駆けつけてくれたのにも感激しました。自分の息子さんが俳優としてデビューする大事な日だったので、彼女はこのスピーチのためだけにパリに来てくれて、スピーチが終わるとまたユーロスターでイギリスに帰ったのです。

M:
ブリューゲルの<十字架を担うキリスト>、この作品を見た時にこれは映画の題材になる、と思ったのでしょうか、それとも映画の題材となる絵画作品を探していた時にこの作品に出会ったのですか。
監督:
正確に言うとそのどちらでもないですね。原作者から『The mill & The cross』という本をもらったのがきっかけでした。もともとウィーン美術史美術館には何度か行ったことがありました。この映画に関わってからはもちろん<十字架を担うキリスト>を何度も観ました。
M:
この作品では、バックの景色がどこからが作られたものか、どこからが自然の空なのか、またどの場面でバックが切り替わったのか、そこにまず視線が行きました。独特の手法による3D映画作品と呼べばいいのでしょうか。背景が大変印象に残りました。
監督:
70〜80%は実際にニュージーランドで撮影した空、そして20〜30%は自分がキャンバスに描いた背景画、といった感じでしょうか。ニュージーランドの空に浮かぶ雲はまるで彫刻のような立体感をもっていて、それはまさにブリューゲルの雲だったのです。
M:
ところで監督は個人的にはどのような美術作品がお好きですか。
監督:
1300年、1400年、1500年代の作品は大好きで何時間でも眺めていられる。バロックの作品だと少し早足になるかな。モダンアートを目の前にするとかなり早足になるよ(笑)。
M:
この映画の日本語タイトルは『ブリューゲルの動く絵』というタイトルですね。内容を喚起させるタイトルだと思いますが、監督はどう思われますか?
監督:
“Moving”という言葉は英語ではMotion、動きという意味とEmotion感動、の二つ意味がある。そういう意味では興味深いタイトルですね。

マイェフスキ監督


まさにタイトルに『ブリューゲルの動く絵』とある通りに、この映画は「動いて」います。そしてその動く絵の中にまるで自分が入り込んでいるかのような錯覚を感じ、人々が暮らす家の中の匂いや、丘の上の風の冷たさ、といった感覚的なものまで体験してしまうかのようです。<バベルの塔>や<雪中の狩人>で有名な16世紀フランドルの巨匠ピーテル・ブリューゲル(Pieter Bruegel de Oude, 1525/30年 ※生年に関しては不明とされている - 1569年 )が描いたこの<十字架を担うキリスト>は、マイェフスキ監督によって「生きている」世界として命を吹き込まれた、と言っても過言ではないでしょう。残念ながらこの作品を始めとするウィーン美術史美術館のブリューゲルの名画は、作品保護のためにオーストリアから海外に出ることはないと言われているため、作品の実物を見るためにはウィーンに出向かなくてはなりませんが、この映画を観た後は「原画が見たい」という強い衝動に駆られました。これまで画家や作家の人生をテーマとした映画は数々ありましたが、映画という手法によって絵画作品そのもの、しかも1点のについて考えてみる、という方法はこれまでなかったのではないでしょうか。
ポーランド出身の監督は創作活動のために世界中のさまざまな国で生活をした経験を持っています。「どの国も住んでみると良いところ、悪いところ両方あるもの。現在暮らしているヴェニスは結構お気に入り。」とか。映画『バスキア』で世界的に有名となり、常に創作意欲があふれ出んばかりの監督。日本を題材にしたらどんな映画を作るのか・・・と感じたインタビューでした。

 
映画『ブリューゲルの動く絵』は12月17日(土)より渋谷・ユーロスペースを皮切りに全国にてロードショー上映されます。
 

[FIN]

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