2016.3月 取材

殺人罪で死刑判決を受けた画家カラヴァッジョ。
その鬼気迫るが作品が上陸!「日伊国交樹立150周年記念カラヴァッジョ展」。

上野の国立西洋美術館で始まった「日伊国交樹立150周年記念 カラヴァッジョ展」(3月1日〜6月12日まで)。
カラヴァッジョは、38歳で没したためその現存する真筆は60点強といわれています。今回の展覧会ではその中の傑作11点が展示され、日本初上陸の作品もあるため、それを見逃すまいと、絵画好きの方で連日大変な人気です。カラヴァッジョ(ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ 1571-1610)は、生まれつき血の気が多い性格が災いしてか周囲の人間とのいざこざが絶えず、殺人まで犯してしまいます。その後逃亡を繰り返し、作品を描き続けるという波瀾万丈の生涯を送った画家です。20世紀後半になってその作品が再評価され、大復活。いまやイタリアを代表する国民的画家として圧倒的な人気を誇ります。日本での展覧会は15年ぶり。みごたえのある作品ばかりです。

展覧会イメージ作品の≪バッカス≫が出迎えてくれます。

前回のカラヴァッジョ展は「時代順」に作品が展示されたとのことですが、今回の展示は「風俗」「五感」「光」「斬首」などのテーマごとに構成されています。カラヴァッジョの作品に加え、ラ・トゥールをはじめ、カラヴァッジョの画法に影響を受けた「カラヴァジェスキ(カラヴァッジョの作品の継承者たちをさす)」の作品を合わせ、計51点強の作品で構成されており、展覧会全体でカラヴァッジョの芸術に迫る内容となっています。

カラヴァッジョ《トカゲに噛まれる少年》
1596-97年頃、フィレンツェ、ロベルト・ロンギ美術史財団
カラヴァッジョ《ナルキッソス》
1599年頃、ローマ、バルベリーニ宮国立古典美術館
会場は濃紺や深紅の壁で構成されており、カラヴァッジョの「濃密な」作品世界と調和している印象です。
カラヴァッジョ≪果物籠を持つ少年≫
1593-94年、ローマ、ボルゲーゼ美術館
カラヴァッジョ≪バッカス≫
1597-98年頃、フィレンツェ、ウフィツィ美術館

このようにテーマを追って作品を見てくると、今回の展覧会のカラヴァッジョの作品には麗しき表情の美少年が描かれていることに気付きます。どの美少年も豊かな表情を持ち、≪トカゲに噛まれる少年≫は観ているこちらが思わず「いたたた」と言ってしまいそうになるほどです。自らに恋してしまう≪ナルキッソス≫、今にも何か言いだしそうな≪果物籠を持つ少年≫。≪バッカス≫も観る人の想像力を大いにかき立てる表情をしています。この作品はカラヴァッジョの自画像という説もあります。ところで≪バッカス≫の左手前に描かれているワインのデカンタには、よく見ると画家自身の姿が描かれています。
これは写真では写らないほどの微細なもの。是非展覧会でご自分の目でじっくりとご覧ください!

作者不詳≪カラヴァッジョの肖像≫
1617年頃、ローマ、サン・ルカ国立アカデミー
カラヴァッジョ≪メドゥーサ≫
1597-98年頃、個人蔵

また、会場には「斬首」というテーマのコーナーもあり、遠い昔より西洋で極刑として執り行われていたこの刑を、≪メドゥーサ≫など、さまざまな斬首の描かれ方を通して興味深く観ることができます。
最後のコーナーにある、世界初公開の≪法悦のマグダラのマリア≫もどうぞお見逃しなく。 MMMライブラリではこの「日伊国交樹立150周年記念 カラヴァッジョ展」の図録をご用意しております。展覧会の予習・復習にも是非お役立てください。

みごたえ十分な展覧会です。
 

「日伊国交樹立150周年記念 カラヴァッジョ展」 2016年3月1日(火)〜6月12日(日)まで 国立西洋美術館
展覧会詳細はこちらから http://caravaggio.jp/

 

[FIN]

ページトップへ

このページについて

MMMスタッフが注目する日本のアート・イベントをレポート!日本で楽しめるアートスポットやフレッシュな情報をお届けしています!

過去の記事を読む

2016年の記事
2015年の記事
2014年の記事
2013年の記事
2012年の記事
2011年の記事
2010年の記事
トップページへ