2010.4.2(金)
世界中の女性たちを見つめ続けるアーティスト、ティトゥアン・ラマズー氏に会ってきました!

「国際女性の日」(3月8日)を記念して、2月27日(土)から約1か月間にわたり、「Femmes@Tokyo」(ファム@トウキョウ)が開催されました。日本とフランスで活躍する女性たちを集めたディスカッションや映画上映などさまざまなイベントが東京・丸の内地区で行われ、行幸地下ギャラリーでは、アーティスト、作家、そして航海者でもあるモロッコ出身のティトゥアン・ラマズー(Titouan Lamazou)氏の作品が展示されました。9年にわたり、地球に生きる女性たちを見つめ続けたラマズー氏に今回の展示についてお話を伺いました。

- T:
- 行幸地下ギャラリーの全長220メートルの空間に、ラマズー氏が旅先で出会った女性たちの写真やデッサン約100点が並びました。
- L:
- 今回の展示については、実際の展示場所を事前に見ることができなかったので、インターネットで展示場所の情報を得て構想を練ったり、指示を出したりしました。展示されているスペースは地下道ですので美術館とはまた雰囲気が違いますね。
- T:
- 日本の作品は見当たりませんでしたが?
- L:
- 確かに「地球に生きる女性たち」と題されていますが、実際は世界中の女性を紹介しているわけではありません。日本や、キューバ、エジプト、ギリシアなどの女性はいません。今回の展示では初めて訪れた場所を中心に紹介していますが、日本は以前取材したことがあったので。今回の展示でアジアの国といったらインドネシア、アフガニスタン、中国とシベリアの一部ぐらいです。
- T:
- ラマズーさんはフランスの国立美術学校へ進み、17歳で方向転換し航海者としての道を選びました。それからはヨットレーサーとして活躍し数々のレースで優勝もされています。引退されてからは、世界を巡って女性たちの作品を制作していますが、今でも旅行し続けているのは女性たちを描くためなのでしょうか?
- L:
- そうです。世界に生きる女性たちをテーマに作品を作り始めたのが2001年のことで、それから7年間、作品作りのため15カ国を回りました。2003年には、当時のユネスコの事務局長だった松浦晃一郎氏に「平和のためのアーティスト」に任命されて、このプロジェクト「地球の女性たち(Femmes du Monde)」に携わることになったのです。旅をするのは女性たちに会いに行くためです。

- T:
- なぜこれらの作品を選んだのですか?
- L:
- 最初は写真だけを展示するつもりでしたが、結局デッサンもまとめて紹介することになりました。なるべくバリエーションに富んだものを選び、文化の多様性を強調しようと思いました。それと、展示場所が公共の場なので過激なものは控えました。以前、ブラジルで行った展覧会では、8 000m2に約1,500点を展示したことがありますが、その時はほぼ全作品を並べました。

- T:
- さまざまな女性の中からモデルとする人をどのように選ぶのですか?例えば外見や人格、身分などといった選択基準があるのでしょうか?
- L:
- 7年間で230人の肖像画を制作していますが、おそらく実際はその10倍の女性たちに会っています。取材旅行を準備する段階でその国の女性の組合について下調べしていきます。そういった組合や人権を守る活動をしている人をモデルに、多くの作品を作っています。僕自身NGOを設立して、資金を集めては女性たちに物資の調達や安全な場所を提供して援助をしています。


「背景は彼女の心象風景です。」と語るラマズー氏。
- T:
- 作品を作る工程を教えてください。
- L:
- まずデッサンを描くことから始めています。いきなりカメラを取り出すのと違って、絵を描くという行為は人に危害を加えず挑発的でもない、静かで安全なものです。デッサンが済むと絵の具を使ってもう少し手を入れたものを描きます。そうしているうちに相手と自然といろんな会話をするようになり、時間をかけてお互いの信頼関係を築いていきます。そして3日、4日あるいは5日かけてから写真を撮ります。


- T:
- 常に女性に眼を向けていますが、男性を取り上げることはしないのですか?
- L:
- 女性を取り上げるのは、単純に、女性が好きだからです。僕の作品に男性が全く登場しないというわけではないですが、割合としては非常に少ないです。いたとしても必要なときにだけ、たとえば背景などに現れるくらいです。唯一ジミ・ヘンドリックスは例外でね。彼のポスターが写っている作品は2枚もあります(笑)。
実は7年間ある実験をしているんです。女性と男性にそれぞれ解答用紙を渡して「あなたの性格を一言で言うと?」や「好きな色は?」、「嫌いなものは?」など同じ20つの質問に回答してもらいました。すると、それぞれの質問に対して女性は、正直に素直な気持ちを伝えてくれるのですが、男性はというと、ありのままの自分を表すことはしないのです。世間体や自尊心が邪魔して正直な言葉が出てこない。それもあって女性に惹かれるんです。 - T:
- ギャラリーでは背広姿の観覧者が目立ちました。
- L:
- それは意外ですね。2008年にパリのシャイヨー宮内の人類博物館(Musée de l'Homme)で行った展覧会では女性が3分の2を占めていました。僕の作品は女性の前向きな姿を映し出しているので、共感してくれているのだと思いました。他でもない、これらの作品は彼女たちへのオマージュなのです。


「僕はあくまでも絵描きです。筆や絵の具と同じように写真で人を描く、絵描きなんです。」
ティトゥアン・ラマズー

このページについて
MMMスタッフが注目する日本のアート・イベントをレポート!日本で楽しめるアートスポットやフレッシュな情報をお届けしています!
過去の記事を読む
- 2016年の記事
-
- クラーナハ展(国立西洋美術館)
- デトロイト美術館展(上野の森美術館)
- ゴッホとゴーギャン展(東京都美術館)
- 拝啓ルノワール先生(三菱一号館美術館)
- ダリ展(国立新美術館)
- モードとインテリアの20世紀展(パナソニック汐留ミュージアム)
- ジュリア・マーガレット・キャメロン展(三菱一号館美術館)
- ウルトラ植物博覧会2016(ポーラ ミュージアム アネックス)
- ミケランジェロ展(パナソニック汐留ミュージアム)
- メアリー・カサット展(横浜美術館)
- ポンピドゥー・センター傑作展(東京都美術館)
- 西洋更紗 トワル・ド・ジュイ展(Bunkamura ザ・ミュージアム)
- 森アーツセンターギャラリー
- マリメッコ(石見美術館)
- 損保ジャパン日本興亜美術館
- BnF(フランス国立図書館)
- 国立西洋美術館
- 国立科学博物館
- 2015年の記事
- 2014年の記事
- 2013年の記事
- 2012年の記事
- 2011年の記事
- 2010年の記事