2010.9.1(水)
今回は、横浜の「ギャルリー・タイセイ」にてル・コルビュジエの軌跡を辿ってきました。
20世紀の建築史に燦然と名を残すル・コルビュジエ(Le Corbusier 1887-1965)。
建築、そしてフランスに興味のある方は、彼の名前はきっと誰もが知っているだろうと思います。
そして建築史にその名を残す彼の偉業をフランスでじかにご覧になったこともある方も多いはず。
その世界中での偉業をパネルでわかりやすく解説する展示を開催中の「ギャルリー・タイセイ」。名前からも想像がつくかと思いますがここは大成建設の文化活動の拠点です。
まず展示室に入ると、中心にあるスペースが目を引きます。これは「モデュロール」を実感できるスペース。モデュロール(Modulor)とは、フランス語の「module((尺度・寸法)」と「or(黄金)」から作られたル・コルビュジエによる造語で、言葉通り、人体の寸法と黄金比を組み合わせることによって考えられ、人体寸法を基準に割り出された、人が暮らしやすいと感じる寸法のことです。日本での尺寸、欧米でのフィートと考え方は同じでも、そこにフィボナッチ級数※により美しさを加えた点が「モデュロール」独特なのです。「人はぴったりする大きさの家に住み、文字通り身の丈に合った暮らしをすることが大切、手を伸ばせば用が足りるのが人にとってちょうどいい空間サイズ」と言っていたというル・コルビュジエ。「学生時代の、手を伸ばせば全てに手が届く部屋とはこのことだったのかもしれない・・・」と考えたりしながら、「モデュロール」が持つ、数字により割り出される極めて数学的な論理と、その論理に図らずとも同居する、極めて人間的な精神性のようなものを感じた空間でした。
※フィボナッチ級数…13世紀のイタリアの数学者レオナルド・フィボナッチが発見したもの。黄金分割比とも呼ばれています。

「モデュロール」についてあれこれ考え少し頭が疲れた後は、作品解説パネルを見ながら、世界中のル・コルビュジエの作品に思いを巡らす旅に出ましょう。勿論フランスにも多数作品はありますが、東京・上野の国立西洋美術館もル・コルビュジエの作品であることをお忘れなく。今まであまり建築のことなど注意せずに、中に展示してある絵画作品のことばかり考えていましたが、ル・コルビュジエが描いたスケッチ画を思い出して、美術館の構造自体を楽しめたら、訪問する楽しみがもっと広がるはずです。



実は建造物や家具に比べてあまり知られていないかもしれませんが、ル・コルビュジエは絵画作品を多数描いています。ギャルリー・タイセイでも残念ながら絵画作品の展示は行っておらず、特別展の時に美術館へ貸し出す時しか私たちも観る機会はありません。(上の椅子に座って絵画作品の映像を楽しむことはできます。)そこで興味を持った方はフランスを訪れた際に、是非以下のミュゼで彼の絵画作品に出会ってみませんか。
○ラ・ロシュ邸、ル・コルビュジエ財団 Maison La Roche, Fondation Le Corbusier (パリ Paris)
○ポンピドー・センター Centre Pompidou (パリ Paris)
○ル・カトー・カンブレジ、マティス美術館 Musée Matisse, le Cateau-Cambrésis (ル・カトー・カンブレジ le Cateau-Cambrésis)
○ユルシュリーヌ美術館 Musée des Ursulines (マコン Mâcon)
ギャルリー・タイセイではル・コルビュジエに関するこれまでの展示に関する印刷物も閲覧することができます。
また、月ごとに絵柄が変わるしおりもいただけますので、毎月訪れて違う絵柄のしおりを集めてみるのは、ル・コルビュジエファンにとって楽しみかもしれませんね。


多彩な表現方法を用いて、劇的な空間や美術作品を創造し続けたル・コルビュジエの作品からは、強烈なパワーが感じられます。その力強さを多くのかたに感じてもらいたいと思います。ル・コルビュジエは新しい建築をつくるために挑戦する闘士でありながら、すぐに落ち込む気弱な一面をもつなど、知れば知るほど身近に感じられ、面白い人物です。人間ル・コルビュジエを通して、今後も彼の多岐にわたる作品をじっくり見ていきたいと思います。

このページについて
MMMスタッフが注目する日本のアート・イベントをレポート!日本で楽しめるアートスポットやフレッシュな情報をお届けしています!
過去の記事を読む
- 2016年の記事
-
- クラーナハ展(国立西洋美術館)
- デトロイト美術館展(上野の森美術館)
- ゴッホとゴーギャン展(東京都美術館)
- 拝啓ルノワール先生(三菱一号館美術館)
- ダリ展(国立新美術館)
- モードとインテリアの20世紀展(パナソニック汐留ミュージアム)
- ジュリア・マーガレット・キャメロン展(三菱一号館美術館)
- ウルトラ植物博覧会2016(ポーラ ミュージアム アネックス)
- ミケランジェロ展(パナソニック汐留ミュージアム)
- メアリー・カサット展(横浜美術館)
- ポンピドゥー・センター傑作展(東京都美術館)
- 西洋更紗 トワル・ド・ジュイ展(Bunkamura ザ・ミュージアム)
- 森アーツセンターギャラリー
- マリメッコ(石見美術館)
- 損保ジャパン日本興亜美術館
- BnF(フランス国立図書館)
- 国立西洋美術館
- 国立科学博物館
- 2015年の記事
- 2014年の記事
- 2013年の記事
- 2012年の記事
- 2011年の記事
- 2010年の記事