2011.9.1(木)
美しい会津の景色の中でひときわその存在感を放つ諸橋近代美術館。
見事な秋の紅葉を楽しみながら是非訪れたい美術館です。
福島県の景勝地である裏磐梯に建つ諸橋近代美術館。東日本大震災で周辺の道路などにも被害が及び、その修復作業が行われていましたが、無事に6月25日に再開館しました。今回は再開館初の企画展「コレクション展 印象画と20世紀の巨匠たち」(11月30日まで)が開催されている諸橋美術館を訪れ、学芸員の宗形敦子(むなかたあつこ)さんに案内していただきます。
裏磐梯の景色との調和を考えて設計されている見事な外観。
この美術館に着いてまず驚いたのは、その驚くほどの建物のスケール。そして気がついたのは美術館の看板やなど旗などがほとんど掲示されていないことでした。このことを宗形さんに訊ねたところ、「この美術館は国立公園の中に建てられているので看板などの告知物はほとんど掲示していません。建物も自然との調和を考えて設計されています。また初代理事長の福島県内の自然に囲まれた中でより多くの方に作品を鑑賞していただきたいという意思により、この場所に決まったのです。」とのこと。会津の自然を尊重し、納得いくまで美しさを追求した初代理事長の諸橋廷蔵(もろはしていぞう 1932−2003)氏の、この美術館に対する熱意が伝わってきます。
そもそもこの美術館は、スポーツ用品会社の創立者であったこの初代理事長がスペイン訪問しているうちにサルバドール=ダリ(Salvador Dali, 1904年 -1989年)の作品に出会い、その魅力に魅せられてコレクションし始めたことがきっかけだそうで、コレクションを地元のみなさんと一緒に楽しみたい」と常におっしゃられていたそうです。
1階の自然光が入る明るいスペースにはサルバドール=ダリのオブジェが多数展示されています。
今回の企画展は印象派から始まる20世紀の西洋近代美術の流れを29点の作品ラインナップでご紹介しています。中でも目玉は今回初お披露目となった、マルク=シャガール(Marc Chagall, 1887年- 1985年)の<テルトル広場>。まさにシャガールの独特の赤が目に焼きつく作品です。シャガール作品としては<黄色と赤の花束>(1953−1954)に次ぐ2作品目だそうですが、やはりこの作品の前では立ち止まって作品を見入っていらっしゃるお客様の姿が多く見受けられました。
今回初お披露目の<テルトル広場>。
出展作品は他にゴッホ、セザンヌ、ルノワール、藤田嗣治、ピカソといったフランスを代表する著名な作家の作品が並びますが、全体的に、作家の前半生の作品を中心としたコレクションとなっています。
(Pierre-Auguste Renoir 1841年 - 1919年)
<モーリス・ドゥニ夫人>。
展示室の外には、今回の企画展に出展されている作家のポートレートが展示してあり、
作家の実際の表情が間近で楽しめるコーナーになっています。
現在の展示室の構成は、美術館入り口から入ると手前に企画展示室、奥がダリの絵画作品の展示室となっています。企画展では印象派の作品の展示からジョアン=ミロ, (Joan Miro i Ferra 1893年-1983年)やジョルジオ・デ=キリコ (Giorgio de Chirico 1888年-1978年)の作品へと続いていき、印象派からシュルレアリスムへの変遷を作品で辿っていく構成になっています。
美術館の再開館の苦労話などを笑顔で語ってくれた宗形さん。「美術館を盛り上げていくには、地元のみなさんとコミュニケーションを取ってうまく連携していくかが非常に重要だと日々感じています。」とおっしゃっていました。
夏の景色もさることながら、裏磐梯の紅葉の季節の眺めは見事です。五色の色を見せる五色沼など、秋のこれからの行楽シーズンに是非訪れてみてはいかがでしょうか。
(諸橋近代美術館は12月から4月までは冬季休館に入ります。)
開館13年目を迎えた諸橋近代美術館。初秋から晩秋にかけ、裏磐梯は過ごしやすく、赤や黄色に色づいた紅葉と山のコントラストはとても美しい眺めです。自然の中で、絵画や彫刻の中に身をおいて、ゆっくり時間を過ごして頂きたいです。またギャラリートークやワークショップに参加し、より作品に親しんでいただくのもお薦め。リニューアルしたカフェにもどうぞお立ち寄りください。
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