2016.5月 取材

フィンランドを代表する世界的ブランド「マリメッコ」。
映画「ファブリックの女王」・「マリメッコ展」。

来年建国100年を迎えるフィンランド。そのフィンランドを代表するファッション・ブランド、マリメッコはもはやフィンランドだけではなく、全世界で絶大な人気を誇っています。

©Bufo Ltd 2015

1951年、アルミ・ラティアによって創業されたこのブランドが60年代になって世界的なブランドへと発展するまでを描いた映画「ファブリックの女王」。5月14日から東京を皮切りに上映が開始されました。
戦後の物資がない時代。布さえ配給制で自由に手に入れることができない時代から、マリメッコの創業者アルミ・ラティアの奮闘が始まります。「戦争で私たちは何もかも失った。でもコルセットなどの不自由から解放された」と、新しい時代の服作りの道を歩き始めます。
そもそも「マリメッコ Marimekko」とはフィンランド語で「小さなMariのための服」という意味。Mariを組み替えるとArmi(アルミ)となり創業者アルミ、の名前になるという、永久的に自分がそこに生き続けることのできる名前なのです。

©Bufo Ltd 2015
©Bufo Ltd 2015

快活で多面性のある性格と天才的なプロデュース力で、男性偏重のビジネス社会に乗り込み、「何をも恐れなかった」アルミの人生。昼夜問わず仕事のことしか考えられず、夜中の二時にさえミーティングのために社員を招集するような生活の中で、当然のように心身ともに疲れていくアルミですが、社員の福利厚生のために尽力する温かい気持ちを忘れない一面も持っていました。
この作品の中にはマリメッコのデザインが数多く登場し、美しい色彩と着こなしを見ているだけで十分に楽しめます。これまで目にしたことがないような色彩の数々。この美しいファブリックが最も映えるように最小限の演出と装置の舞台劇のかたちをとっています。この作品の監督はヨールン・ドンネル。初期のマリメッコの役員を務め、フィンランド人で初めてオスカーを受賞しています。構想50年で映画化を実現させました。

©Bufo Ltd 2015

「私はライフスタイルを売るのよ」と言っていたアルミ。その情熱は今もなおマリメッコ社に引き継がれています。

2016年5月14日(土)より ヒューマントラストシネマ有楽町・渋谷ほか全国順次公開!
【オフィシャルHP】
http://www.q-fabric.com

そして現在島根県の石見美術館では「マリメッコ展」(7月11日まで)が開催されています。この展覧会は、ヘルシンキのデザイン・ミュージアムの所蔵作品からファブリック約50点、ヴィンテージドレス約60点、デザイナー自筆のスケッチ、各時代の資料などから構成され、マリメッコの60年の歴史をたどっていく内容となっており、国内でここまでマリメッコの大規模な展覧会が開催されるのは初めてとなります。

通路には自然光が入りたいへん開放的で明るい設計となっています。建物の屋根には、島根産の瓦が全面に使用されています。
マイヤ・イソラの図案デザインによるファブリック《ケイサリンクルーヌ》と、《カイヴォ》が展覧会場の入り口で出迎えてくれます。小ぶりな作品はおなじみ《ウニッコ》。フィンランドの映像を見ながらマリメッコの世界の中に入っていきます。

取材当日は学芸員の廣田さんにご案内いただきながら、マリメッコ展について、またマリメッコのデザインの魅力などについてご説明いただきました。
まず展覧会が始まってこれまでのお客様からの反響などについておうかがいしました。高知県立美術館での開催時も予想を大きく上回る入場者数を記録したようですが、この石見美術館でも開催からまだ日が浅いですが、たいへん多くの来館者の方に来ていただいているとのこと。平日でもたくさんの方がいらっしゃっているようです。
展覧会場はたいへん広々としており、内装の木の色目とマリメッコの鮮やかな色彩が調和して「フィンランドの自然のモチーフを必ずデザインの中に表現する」マリメッコのデザインのポリシーと見事に調和した雰囲気をつくり出しています。
マリメッコの創業者アルミ・ラティアはまずロゴマークのデザインから取り掛かります。無名のデザイナーたちがさまざまな案を提案しますが、アルミはそれをすべて却下し、オリヴェッティ・タイプライターの普通の書体で作るように指示したそうです。その当時のロゴ候補の数々も資料として残っています。

マリメッコのロゴ候補の数々。

今回の展示では、やはり年代順に各作家の作品を一堂に観ることができるのが、何よりのうれしいポイントです。マリメッコには、それぞれ各時代に名作を作りだしたデザイナーがいたことはよく知られていますが、実際にそのデザイナーたちがどういうものを作りだしていたのかを同じ空間内で同時に観ることができるのです。デザイナーの中には日本人も2名いて、個性的な作品を創り出しました。
そのうちの一人が石本藤雄氏。フィンランド在住で、1980年代にマリメッコ・デザイナーの最も中心的な存在となって活躍しました。現在は陶芸家としても活躍されているとのことです。

石本藤雄氏の作品の数々。実際のファブリックサイズに対して下絵のサイズをとても小さく描くことも特徴的だったようです。

そして石本藤雄氏がデザインにかかわったコットンバッグは、実際にフィンランドの高校で通学用のバッグとして使用されているそうです。日本で中学生が斜めがけしていたいわゆる「ズック」製のバッグがヒントとなったそうですが、マリメッコのバッグを高校のバッグに採用するなど、やはりデザイン先進国のフィンランドのセンスに脱帽です。

映画「ファブリックの女王」で登場するファブリックもさまざま展示されています。

「よく見てください。カラーサンプルを貼る台紙も布地で織ってわざわざ作成しているんですよ。こだわりは見事です」と廣田さん。どれ一つとってもマリメッコのデザインに対する熱意が観ている者の気持ちまで熱くしてくれます。

フィンランドデザイン、特にマリメッコファンには垂涎モノの展示品ばかり。
「あ、これ欲しい」という声が会場のあちこちで聞こえました。「私はライフスタイルを売るのよ」と言っていたアルミの夢は約60年経って世界中に伝わっているようです。
「マリメッコ展」は石見美術館の後、兵庫、東京、新潟と巡回し、その後も巡回の可能性があるとか。日本各地でマリメッコ旋風を巻き起こしながら、フィンランド建国100年の記念すべき年を華やかに彩るに違いありません。

学芸員・廣田さんのコメント
今回は歴代のファブリックを天井から掛けてみました。いずれも力強い作品ばかり。おかげで展示室は明るく、華やかな雰囲気になっています。オススメの見方は個々のデザイナーの作品を見比べてみること。初期のデザイナーと最近のデザイナー、あるいはフィンランド人デザイナーと日本人デザイナーの間に意外な共通点など見つかり楽しいですよ。直感的に作品のよさを味わえるマリメッコ展。年齢を問わずみなさんに楽しんでいただける内容となっています。ぜひご来場下さい!

石見美術館の詳細はこちらから
http://www.grandtoit.jp/museum/

MMMライブラリではマリメッコ展図録をご覧いただけます。

 

【展覧会・巡回展情報】
「マリメッコ展」デザイン、ファブリック、ライフスタイル
島根県立石見美術館 4月23日〜7月11日 http://marimekko-exhibition.jp/
西宮市大谷記念美術館 10月8日〜11月27日
Bunkamura ザ・ミュージアム 12月17日〜2017年2月12日
新潟県立万代島美術館 2017年3月4日〜6月11日(予定)

 

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