2012.4.1(日)
空想と現実の世界「ユベール・ロベール展」(国立西洋美術館)、
現実の中で空想する世界「生きる石 フェランテ・フェランティ写真展」(東京日仏学院)。
東京・上野の国立西洋美術館では「ユベール・ロベール−時間の庭−展」が開催されています(5月20日まで)。ユベール・ロベール(Hubert Robert/1733-1808)は18世紀フランスにおける代表的な風景画家であり、イタリア留学時代に見た古代建築や彫像といったモチーフを題材に、彼独自の自由な発想による独特の風景世界を描き出した作品で知られています。この展覧会は、ロベール作品の有数のコレクションを持つヴァランス美術館が現在改装工事で休館しているために実現しました。日本では初の、ロベールの初期から晩年までの作品を一堂に見ることができる展示となっており、サンギーヌ(赤チョーク)の素描も83点展示されている、たいへん貴重な展覧会です。
会場は素描、油彩画、版画、家具などの展示で構成され、ロベールの才能の幅広さを感じさせます。また、画家としてその名が知られているロベールですが、画家としてだけではなく「国王の庭園デザイナー」の称号を持って数々の庭園のデザインも手がけていました。現実の風景の中に古代風な建築や人工的な滝や洞窟などを配置して、まさに自分の絵画作品を現実のものとして生み出していた、ということを考えると、作品を見る楽しさも増していきます。



(右)≪コンスタンティヌス凱旋門のヴァリエーション≫1756年、ヴァランス美術館



東京・飯田橋にある東京日仏学院では、「生きる石 フェランテ・フェランティ写真展」が開催されています(4月15日まで)。フェランテ・フェランティ(Ferrante Ferranti)は1960年アルジェリア生まれの写真家で、1985年にパリで建築家のディプロムを取得後、パリに居を構えながら、世界中への旅の中で作品を制作。そしてロベールの作品に影響を受け、時代の変遷を感じさせる世界中の建築物の「石」の表情を撮り続けています。どの作品の中の「石」も、時代を経てきた独自の「表情」をしており、個々の風景を作り出しています。






全く同じ風景を対象としていないのにもかかわらず、ロベールの≪古代遺物の発見者たち≫とフェランティの作品が同じ風景と感じてしまうことに驚きました。まさに「建築の時間旅行」となっている2つの展覧会です。4月14日(土)には国立西洋美術館、4月15日(日)には東京日仏学院で、「時の作用と美学」というテーマで、フランスと日本の研究者・建築家・アーティストの参加による国際シンポジウムも開催。一つのテーマで二つの展覧会が楽しめる貴重な機会となりそうです。
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