2014.2月 取材

「フルーツ・オブ・パッション ポンピドゥー・センター・コレクション」展。
最新の現代美術コレクションを堪能します。

兵庫県神戸市中央区に建つ兵庫県立美術館。平成7年の阪神・淡路大震災からの「文化の復興」のシンボルとしてHAT神戸(震災後の神戸東部新都心の愛称)に平成14年に誕生した美術館です。現在この美術館では「フルーツ・オブ・パッション ポンピドゥー・センター・コレクション」展が開催されています(3月23日まで)。フランス、パリのポンピドゥー・センターの最新コレクションを見ることができるこの展覧会。開催までのいきさつ、個々の作品についてなど、広報の八島和臣(やしまかずおみ)さんにご案内いただきながら、お話を伺いました。

世界的に有名な安藤忠雄氏による建物。建物の背景は海に面しています。

まずこの展覧会開催までにいたるきっかけについてお聞きしました。「それは蓑館長の熱意によるものであると言えると思います。館長はこの美術館で、ぜひポンピドゥー・センターの作品を展示したいと、就任当初からずっとアプローチし続けていたのです」とのこと。この展覧会名である「フルーツ・オブ・パッション」という言葉通り、館長の熱意が実を結んで実現した展覧会なのです。

自然光が心地よい広い館内では、自分のペースで美術鑑賞を楽しむことができます。

ポンピドゥー・センターは日本でもたいへん人気のある美術館であるうえに、その最新作品の展示ということで、やはり注目度は高く、遠方からも見学に訪れる方が多いそうです。
この「フルーツ・オブ・パッション」展はパリのポンピドゥー・センターでも開催された展覧会。今回の展示ではその25作家31点の作品に、以前よりポンピドゥー・センターに所蔵されていたゲルハルト・リヒターやロバート・ライマンといった現代美術の巨匠による作品4点を加えたものです。

この3点は、今回の展示のために、以前よりポンピドゥー・センターに所蔵されていた現代作家の巨匠の作品が特別に貸し出されたものです。
イザ・ゲンツケン(1948-)<無題>2006年。
©Isa Genzken/Cortesy Galerie Daniel Buchholz,Cologne/Berlin
オスカー・トゥアゾン(1975-)<タイヤ・テスト・コラム>2009年。
©droits réservés
ジェイソン・ローズ(1965-2006)<ボーブールの雌猫>2004年。ネオン、木、アクリル、金属、電気コード
©The Estate of Jason Rhoades

今回の展示作品はパリのポンピドゥー・センターにあるパリ国立近代美術館にこの10年間で加わったコレクションです。これらの作品は国立近代美術館友の会(la Société des amis du Musée national d'art moderne)が2002年に立ち上げた「現代美術プロジェクト(le Projet pour l'art contemporain)」によって収蔵されたものです。このプロジェクトはこの友の会のメンバーが若手作家たちの作品を買い上げ、国立近代美術館に寄贈するというもの。美術に非常に熱意のあるメンバーの出資によってこのコレクションは成り立っているのです。作家の多くはヴェネツィアのビエンナーレなど国際的な展覧会で活躍する、話題の作家たちばかり。現代美術の作家たちを自分たちの手で育てあげ、活躍の舞台を与える、という芸術の国・フランスの美術に対する熱い思いが伝わってくるプロジェクトです。
「“現代美術はどのように理解していいのかわからない”という声を耳にすることもありますが、ご自分のお好きなように理解して楽しんでいただければそれで十分だと思います。現代美術は技巧やテクニックを競うというよりも、作家のアイディアの競演と言えるものが多いと言えるでしょう。作家のアイディアに驚いたり感動したり、笑ったりしてください」と八島さん。展示作品を見ていくと、五感で鑑賞していることに気づきます。

一つの展示室全てを使った4面スクリーンの映像。自分が海の中にいる錯覚を起こします。
ジャナイナ・チェッペ(1973-)<血液、海>2004年。
©Janaina Tschäpe
作者がビオラを弾き始めると、山に反響してハーモニーを奏でる、という動画作品。
ツェ・スーメイ(1973-)<エコー>2003年。
©Su-Mei Tse
今回の展覧会のメインビジュアルの作品。
先端にはターメリックなどの3種類の香辛料が入っているため、展示室にはややスパイシーな香りがします。
エルネスト・ネト(1964-)<私たちはあの時ちょうどここで立ち止まった>2002年。
©Ernest Neto

蓑館長は「美術館というところが、楽しくて、しかも自分の身体の中に感性を植えつけてくれる場所だという意識を持っていただきたい」とご自身のメッセージの中で述べられています。 まさにそのメッセージを身近に感じることのできる場所です。

 

広報・八島和臣さんからのコメント
本展では絵画だけでなく、映像、インスタレーションなどさまざまなジャンルの作品をご鑑賞いただけます。計25作家による31点の作品は、ポンピドゥー・センターの現代美術コレクションのハイライトとも呼べるもの。発想の面白さを感じられる作品や、音や香りが印象的な作品まで、多様な表現をお楽しみください。全国でも神戸だけで見ることのできる特別な展覧会です。3月23日(日)までの開催ですので、この機会をどうぞお見逃しなく!

兵庫県立美術館
〒651-0073
神戸市中央区脇浜海岸通1丁目1番1号[HAT神戸内]
TEL:078(262)0901

■開館時間
10:00〜18:00(入場は17:30まで)
※特別展会期中の金曜日と土曜日は夜間開館 10:00〜20:00(入場は19:30まで)
■休館日
月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12月31日、1月1日)

兵庫県立美術館の詳細はこちらから
http://www.artm.pref.hyogo.jp/index.html

 

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