2014.12月 取材

カルコグラフィーの魅力を堪能できる展覧会
うらわ美術館 「ルーヴル美術館の銅版画展」

浦和駅からすぐ、浦和センチュリーシティビルの3階にある「うらわ美術館」。地域ゆかりの作家によるコレクションをはじめ、「美術作品としての本」のコレクションを特徴としており、開館から15年目を迎え、市民の方にもなじみとなり、地元に愛されている美術館です。
現在ここでは「ルーヴル美術館の銅版画展 カルコグラフィーコレクション」が開催されており(1月18日まで)、ルーヴル美術館カルコグラフィー工房の多数の作品が展示されています。MMMにも数多くのカルコグラフィーがありますが、これほどの点数のカルコグラフィーをまとめて見る機会はなかなかありません。今回は学芸員の山田志麻子(やまだ・しまこ)さんに案内していただきながら、この展覧会をご覧になったお客様の様子、カルコグラフィーの魅力などについて伺います。

浦和駅からすぐ、近代的な浦和センチュリーシティビルの3階にある美術館です。

「ルーヴル展と言えばタブロー(絵画)の展覧会が多いので、こういった版画の展示は新鮮な印象ですね」 と山田さん。訪れるお客様も銅版画をご自分でやられている方、銅版画がどのようにして刷られているのかといった工程にご興味のある方など、さまざまだそうです。
「カルコグラフィー」とはもともとギリシャ語で「銅板に書かれたもの」の意味で、ルーヴル美術館にあっては、同館グラフィック・アート部門カルコグラフィー室を指すと同時に、その工房で刷られた版画を意味します。
ルーヴル美術館カルコグラフィー室の原版は古くは約400年前のもの。ルーヴル美術館の原版コレクションは、17世紀に絶対王政を極めたルイ14世が、フランス王家の権勢を国内外に知らしめるため、壮麗なイベントや王宮、芸術作品などを銅版画によって記録することを奨励したことに始まります。続く歴代の王たちの下、原版コレクションはさらに豊かなものになり、革命を経た1797年、王家所有の3000枚のコレクションを引継ぎカルコグラフィー室が設立されました。

カルコグフラフィー室の基礎となった、ルイ14世の「王の植物図譜」シリーズの作品。

展示室の途中にある映像コーナーではMMMから提供させていただいた、カルコグラフィーの工房で取材した製造工程の動画を上映していただいています。多くのお客様が、この映像を興味深くご覧になっています。「この映像を見て銅版画がどのようにして作り出されるかよくわかりました、とお客様におっしゃっていただいています」と山田さん。

展示室内にある映像コーナーではMMMからご提供させていただいた「カルコグラフィーができるまで(約15分)」(日本語字幕付き)を上映しています。
著名作品を楽しむことができるのも銅版画の大きな魅力です。
展示室の様子。

銅版画の作品と、その作家の他の作品も楽しんでいただけるように、と関連書籍なども合わせて展示しているコーナーもあり、観る楽しさが広がります。この出展貴重書はうらわ美術館のコレクションからの出展です。

ピエール・アレシンスキーの銅版画作品「旅する筆」と、ピエール・アレシンスキーによる書籍の挿絵。
ジャン=バティスト・ウードリーの版画作品と書籍『寓話集』より「愛の神と狂気の女神」の中の挿絵。

「銅版画は複数制作することのできる身近な存在ですが、絵画作品にない魅力を皆様に感じていただきたいと思っています。この機会に是非、足をお運びください」と山田さん。
じっくりと銅版画に対面できる展覧会です。

 

学芸員・山田志麻子さんからのコメント
本展では、ルーヴルやヴェルサイユ宮殿の様子、ルネサンス以降の名画の記録、現代作品、ボタニカルアートなど、歴史・科学資料、情報伝達手段、そして芸術表現としての銅版画の多面的な魅力をお楽しみいただけます。ルイ14世までさかのぼる歴史を持ち、今も新たに刷られているカルコグラフィー室のコレクションは、いわば知られざるルーヴルの一面と言ってもよいでしょう。さらに、当館収蔵品より、本の挿絵として刷られた銅版画も追加出品しています。ぜひ銅版画の緻密で多彩な世界をお楽しみ下さい。

うらわ美術館
休館日/月曜日(祝日の場合は開館・翌日休館)、年末年始(〜1/4)
観覧料/内容により異なります。
*団体割引あり、障害者手帳をお持ちの方および付き添いの方1名は半額になります。
*教育課程に基づく学習活動等の減免については、お尋ね下さい。
住所/〒330-0062  さいたま市浦和区仲町2-5-1 浦和センチュリーシティ 3階

 

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