2011.1.1(土)

始まりました!「クラブ・フランス」。
今回はこのカードを持って、パリの姉妹都市・京都でフランスを見つけます。

関西日仏会館が中心となって発足した「クラブ・フランス」が12月1日よりサービスを開始しました。(このクラブには、東京ではMMFブティックがパートナーとして参加しています。)

今回はこのカードで特典を受けられる美術館のうちの一つである「京都国際マンガミュージアム」を訪れました。日本の「マンガ」とフランスの「BD」(ベデ)の違いについて、また、フランスにおける日本のマンガの存在についてなど知りたいことがたくさんあり、思わず向かう足が早まります。

現在の京都国際マンガミュージアムの建物は、かつては小学校だったそうです。なるほど、そう言われてみると、確かに建物は校舎、庭は校庭だったことがわかります。訪問した12月までは「マンガ・ミ−ツ・ル−ヴル―美術館に迷い込んだ5人の作家たち」展が開催されていたため、外に大きなフランス国旗が飾りつけられ、入り口では来館した複数のフランス人親子の会話が聞こえ、「ここはフランス?」と思ってしまうほど。

小学校の跡地を使って、上手に地域密着の施設となっていることがよくわかります。
© Tezuka Productions
館内に入って上を見上げると手塚治虫の傑作「火の鳥」が。木造だそうです。圧巻です。

ミュージアム研究員の伊藤さんに、日本の「マンガ」とフランスの「BD」の違いについてお聞きしました。
「そもそも日本においてひと言で「マンガ」と言われている分野のものは、フランスでのBDと同一のものと見なされがちですが、フランスでBDは「第九芸術」と呼ばれ,日本のマンガとはまた異なった文化を発展させています」とのこと。確かに並べてみただけでその違いは一目瞭然。日本の、メリハリのあるコマ割り、吹き出しによるアクセント、効果線による強調など、フランスのBDには見当たりません。しかも細かい彩色によって、フランスのBDは一種の「画集」のよう。ギフトで贈る場合も多い、というお話にも納得です。

ところで世界におけるマンガ、コミックスの国内市場規模のベスト3をご存知でしょうか。答えは、1位日本、2位アメリカ、そして3位はフランスなのだそうです。
さらに、日本マンガは現在、世界中で読まれています。フランスも例外ではなく、国内のコミックスの販売部数の約4割が日本マンガです。フランスにおける日本マンガの売れ行きがそこまで伸びていることにはやはり驚きを感じます。
私たち日本人は子供の頃から何気なくマンガを読んでいましたが、そのマンガが世界中で読まれる時代が来ることなど予想すらできませんでした。
もはやマンガは立派な「日本の輸出品」であると言っても過言ではないのかもしれませんね。
そんな時代を迎えた今、今回の展覧会は、この現代の「芸術」に,“美の殿堂”として世界に冠たるルーヴル美術館が注目し,同美術館とフランスの出版社フュチュロポリス社が,共同でマンガ界を代表する作家にルーヴル美術館をテーマにした作品制作を依頼し,単行本として出版するというプロジェクトによって実現したものです。
5人の作家(ニコラ・ド・クレシー、マルク=アントワーヌ・マチュー、エリック・リベルジュ、ベルナール・イスレール、荒木飛呂彦)による個性豊かな作品の原画を中心に紹介したもので、ルーヴル美術館と国際的なコミックフェスティバルで有名なフランス西部アングレーム(Angoulême)にあるフランス漫画博物館(Musée de la Bande Dessinée)でしか見られなかったものが日本初上陸という画期的な内容でした。

© Musée du Louvre Éditions / Futuropolis
© Musée du Louvre Éditions / Futuropolis /LUCKY LAND COMMUNICATIONS 2009 by HIROHIKO ARAKI

実は2009年にルーヴル美術館でこの展覧会が開催された時に、偶然パリにいた私はこの展覧会を見ることができ、今回の出展作品でもあるニコラ・ド・クレシー(Nicolas de Crécy)の<氷河期>を入手して読んだのが、BDを意識した最初の経験でした。その時には、「ルーヴル美術館がマンガの展示をする」ことにやはり驚きを感じたことを覚えています。

ニコラ・ド・クレシー作
『氷河期』
© Musée du Louvre Éditions / Futuropolis

そしてその展覧会を日本でまた見ることができたのは、日本の「マンガ」、フランスの「BD」を軸にした新しい文化的交流の誕生、と言い切っても過言ではないはずです。
そういった意味からも、今回の展覧会での出展作家である、日本人作家の荒木氏に焦点を当てずにはいられません。
『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』は、荒木氏の代表作とも言える『ジョジョ』シリーズの登場人物でもある特殊な能力を持ったマンガ家が、ルーヴル美術館に所蔵されているという謎の絵を追い、その正体をつきとめるという物語。荒木氏はこの作品を描くために、ルーヴル美術館の作品収蔵庫に特別に入場を許可され、取材をして描いたそうです。確かに、実際に見た人でしか表現できない詳細な部分まで描かれていることがわかります。ルーヴル美術館の作品の展示部分についても事実に基づいて描かれているため、ルーヴル美術館を訪問されたことのある方は、その場面を思い出しながら、この作品の描写のリアリティ、そしてその中を縦横無尽に走り回るキャラクターに不思議な臨場感を感じずにはいられないはずです。

『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』
© Musée du Louvre Éditions / Futuropolis /LUCKY LAND COMMUNICATIONS 2009 by HIROHIKO ARAKI

今回の展覧会の他の出展作品は、『氷河期』、『レヴォリュ美術館の地下』、『奇数時間に』、『ルーヴルの上に広がる空』でした。(この原画展を見逃した方も、このBDの本そのものはいつでも京都国際マンガミュージアムで読むことができますし、関東の方は是非MMFにいらっしゃってください。全て手に取って閲覧していただくことができます。)

企画展を見学し終わった後は広報担当の中村さんに館内を案内していただきました。2階へ上ると、目の前には床から天井までマンガで埋め尽くされた空間が・・・。所蔵点数は30万点を誇るそうです。小学校の頃購読していた週刊コミック誌、中学校になって友人と回し読みしていた単行本のコミックなど、あれもこれも今すぐ手に取って読みたい衝動にかられ、とうとう、足が先に進まなくなってしまいました…。しかも、もはや絶版で入手不可能だと知りながら、個人的に長年追い求めていた単行本シリーズが全巻目の前に!開架の5万冊のマンガ単行本は、いつでも自由に読むことができますが、雑誌などの開架資料の一部も、閲覧されたい方は事前に予約し、希望するマンガを館内で読むことができるのだそうです。
「博物館」と「図書館」の機能をもった施設であることを実感しました。

壁はマンガで埋め尽くされています。「少女」「少年」「青年」とフロアごとにコミックが分類されています。
マンガ出版に関する数字的なデータ、マンガの制作工程などに関しての情報コーナーも充実しています。
フランスの女性にも「恋愛もの」コミックは人気だとか。
ご存知、『ヴェルサイユのバラ』。
コンビニ専用単行本など、実は様々な形態で出版されていることを知り驚きました。フランス語版も勿論展示されています。

広い館内では、マンガの原点とも言える「紙芝居」の実演や、世界各国の言語で出版されているマンガの展示、お子様連れの来館者同士が楽しめる絵本ルームなど、年代・国籍・性別を越えて時間をたっぷり楽しめる施設が充実しています。

紙芝居の実演。駄菓子を食べたりクイズに答えたり、年代問わず楽しませてくれます。
フランス語で出版されているマンガのコーナー。

折しも1月は、フランスのアングレームで年に1度の「国際漫画フェスティバル」が開催される時期。世界中からこのフェスティバルの見学者が集まるため、町の人口が一気に膨れ上がるのだそうです。MMFのwebサイトでは、2009年に開催されたフェスティバルのレポートを掲載していますのでどうぞ併せてお読みください。

 
京都国際マンガミュージアム研究員・伊藤さんからのコメント
「京都国際マンガミュージアムは、文字通り古今東西のマンガを集め、研究し、その成果を様々な形で公開している、世界でも数少ない総合マンガ文化施設です。収集したマンガ資料30万点のうち、5万冊のマンガ単行本は、いつでも自由に読むことができます。
と言っても、当館は、単なる大型マンガ喫茶ではありません。むしろ、本としてのマンガを読んでいるだけでは知ることができない「マンガ本の外側」を知ってもらえるような、マンガに関する展覧会、作家さんや研究者を招いた講演会などを積極的に行ってきました。
また、コスプレ交流会や、料理マンガに出てくる料理を実際作って食べるイベントなど、「読む」だけではないマンガの楽しみ方も提案しています。
海外マンガの収集、研究も行っていますが、最近は特にフレンチ・コミックスに関するビッグイベントが続きました。今後も色々と計画していますので、ウェブサイトなどをぜひチェックしてくださいね!」
 
 
京都国際マンガミュージアム
http://www.kyotomm.jp/
 
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