2015.6月 取材
モリゾ没後120周年の今年、
「画家モリゾ、マネの描いた美女〜名画に隠された秘密」公開中です。
フランスの画家ベルト・モリゾ(Berthe Morisot、1841 - 1895)は、19世紀印象派の女性画家です。モリゾという名前からは、マネが描いた《すみれの花束をつけたベルト・モリゾ》(オルセー美術館所蔵)の作品を連想される方が多いと思いますが、この作品はまさにそのマネとモリゾの関係の謎に迫る作品です。



モリゾはパリ16区で厳格な両親の教育のもと、裕福な暮らしを送る女性。姉のエドマとは絵画に関しての議論をぶつけても、常に一緒に行動する仲のいい姉妹として描かれています。 その二人がルーヴル美術館で出会ったのがマネ(エドゥアール・マネ、Edouard Manet, 1832- 1883)。娼婦を描いた作品《オランピア》でスキャンダルを巻き起こしている最中の話題の画家でした。マネは自分に好意をもったエドマではなく、モリゾを自分の作品のモデルとして指名します。
芸術に深い理解と知識をもつ両親でも、モリゾがマネのモデルになることには猛反対をします。初めはモデルとなることを拒否していたモリゾでしたが、マネの説得に折れ、両親の目を盗んでまでマネの作品のモデルを務めます。名作《バルコニー》がどのようにして誕生したか、このくだりは絵画ファンならずとも、謎解きの答えを聞いた時のような爽快感さえ感じる場面ですのでお見逃しないように。

幼い頃からコロー(ジャン=バティスト・カミーユ・コロー、Jean-Baptiste Camille Corot、1796- 1875)を師として絵画を学んでいたモリゾでしたが、前衛的な作品を描くマネに徐々に魅かれていき、自分の芸術の方向性を見つけていきます。モリゾの作品に対しての変化、気持ちの変化をモリゾ役のマリーヌ・デルテリムが抑えた表情の中で表現していきます。


19世紀、男性中心の画壇にあって、「結婚」「将来」などについて悩みながらも着実に画家として自分を作り上げていき、「印象派」の誕生にかかわり、その中心メンバーとしてその地位を確固たるものとしていったモリゾ。「現代の女性が抱える悩みと同じね」という声が聞こえてきそうな場面が多々ありますが、それもこの映画に女性が共感できる理由の一つかも知れません。 また、この映画の魅力の一つはやはり絵画の登場です。ルーヴル美術館の場面、《オランピア》、《笛を吹く少年》などの名画の登場は絵画ファンならずとも楽しい場面です。
「モリゾとマネは恋愛関係にあったのか」という疑問を最初から最後まで通して感じる作品でもありますが、モリゾが最終的にマネの弟ウジェーヌ・マネと結婚するため、その疑問は最後まで残ります。それは観る方の想像にお任せする、といったところでしょうか。
フランスの名門映画学校IDHEC(現在はFEMIS)で映画を専攻したカロリーヌ・シャンプティエ監督の繊細な描写が楽しめる映画です。
[FIN]

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