2013.7月 取材
酒田市美術館。
庄内の豊かな緑と調和した美しい美術館です。
山形県酒田市。最上川が流れる緑豊かな庄内平野に位置しています。ここはやはり米どころ。市内にも米蔵が並び、独特な風景をつくり出しています。


酒田駅から最上川を抜けて行くと、酒田市美術館があります。9月1日までここでは「ルーヴル美術館の銅版画展 カルコグラフィーコレクション」が開催されています。その後、この展覧会は引き続き盛岡市民文化ホールで10月27日まで開催されます。
本日はMMMとも非常に関わりの深いカルコグラフィーの歴史、そして事前準備のために渡仏されたという学芸員の熱海熱(あつみあつし)さんに、展覧会準備のお話や今回の展覧会の展示についてなど、いろいろとお聞きしながら展覧会をご案内いただきます。


まず今回の展覧会の見どころについてお聞きします。「ルーヴル美術館のコレクションの中には、一般的には見る機会の少ないグラフィック・アート部門があります。その数は10万点ともいわれているのです。その中でも特に歴史が深いのがこの銅版画『カルコグラフィー』なのです。今回は普段なかなか見ることのできないこの作品を130点集めて見ていただくことで、その存在と魅力を多くの人に知っていただければと思います」と熱海さん。


「銅版画はその線の強弱・密度によって画面のコントラスト・調子が表現されます。そのため、じっくりとそれを見ていただこうと、今回は虫眼鏡を置いて、お客様が作品を拡大しながら、銅版画の細かい描写をゆっくりと眺めていただく展示にしています」とのこと。確かに拡大することで、版画の描写が線によって成り立っていることを見て取ることができます。


ルーヴル美術館カルコグラフィー室は、太陽王ルイ14世の時代に誕生しました。後に、自らが作り出したもの、世の中で起こっていることなどを世の中に広めるために版画制作を強力に推し進め、「王の版画原版収集室」が設立されました。それが1797年「国立カルコグラフィー室」コレクションとして誕生、現在までそれが引き継がれているのです。工房には古くは400年前の原版から現在の現代作家の新作までを含め、約13,000点の原版が保管されています。
その中から130枚の作品が、今回の展覧会では西洋美術史の流れに沿って展示されています。


いくつかの作品は単色刷りと多色刷りが同時に展示されており、対比を楽しむことができます。
昨年展覧会が開催され、非常に人気のあったジャン・シメオン・シャルダン、今年の秋に展覧会が開催され、また話題になると思われるギュスターヴ・モローの作品なども複数展示されており、油彩の作品にはない銅版画での作品の魅力を感じることができます。




企画展示室を抜けて奥の常設展示室では、この美術館建設の礎ともなった新田嘉一氏寄贈の森田茂コレクションが展示されています。17代酒田商工会議所会頭の新田氏が20年間森田氏と交流し、収集し続けた作品が酒田市に寄贈され、酒田市美術館のもととなったのです。この展示室は調光によって一日の中で作品のさまざまな表情を見ることができる設えになっています。「ここで新田さんが座って作品を眺めていらっしゃることがあります」とのこと。森田氏の作品は絵の具を筆に取らず直にキャンバスに塗っており、どれも100号を超える大きさであるため、その重量感、迫力とともに、エネルギーがほとばしるような力強い作品からは、元気になるパワーのようなものを感じます。「新田さんもここで作品からエネルギーをもらっていたのかもしれませんね」と熱海さん。




また酒田市美術館の驚くべきところはその敷地面積の広さです。平屋立ての建物はどこから見ても酒田市を一望できる庭に面しており、この庭へは自由に出入りができるため、この時期は夏休みの親子連れの方が、楽しそうに散歩している風景を見かけました。「これは何に見えるか」と言いながら屋外展示の安田侃氏の作品<翔生>に触れてみたり、芝のいい感触を楽しんでみたりと、庄内平野の自然を感じながらアートに触れることのできる場所です。


何に見えますか・・・?
MMMのWebサイトでもカルコグラフィー工房取材記事が掲載されておりますので、ぜひ併せてお楽しみください。
学芸員・熱美 熱(あつみ あつし)さんからのコメント
当展覧会は、東北地方では初の開催となります。油彩画の展覧会が注目を集めるルーヴル美術館ですが、今回はあまり知られていない「カルコグラフィーコレクション」をご紹介します。銅版画の持つ描線の美しさを充分にお楽しみください。
酒田市美術館
詳しくはこちらから→http://www.sakata-art-museum.jp/
[FIN]

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